ヘンデル~音楽劇「ヘラクレス」あらすじ

<物語の前に>
ゼウスとアルクメネの間に生まれたヘラクレスは、ゼウスの正妻ヘラの迫害と共に生き、またそれを卓越した力と知恵で乗り越える中で、英雄としての名声を確固たるものとした。
有名な12の難業を達成後、ヘラクレスはカリュドンの王女デイアネイラと結婚する。彼はある時妻と息子ヒュロスと共に川を渡ることになり、まずヘラクレスがヒュロスを担いだ。そしてデイアネイラは渡し守のネッソス(ケンタウロス族の1人)に任せたが、ネッソスがデイアネイラを犯そうとしたので、怒ったヘラクレスは毒矢でネッソスを射抜いた。
ネッソスは死の間際に「自分の血には愛を蘇らせる効力がある」とデイアネイラに言い残し、それを信じた彼女はネッソスの血を採っておいた。しかしその血は、触れただけで皮膚が焼けただれる猛毒なのであった…



<第1幕>
戦いに出て長い間帰ってこないヘラクレスを妻デイアネイラが心配し、取り残された寂しさを嘆いている。息子ヒュロスが、オイテ山頂でヘラクレスが焼け死んでいる光景を神託を受けた祭司が見たと伝えると、絶望したデイアネイラは死後に極楽浄土で夫と再会するしかないと考える。しかしヒュロスは希望を捨てず、どんな危険を冒してでも父を捜し出し連れ帰るために、明朝旅に出ると言う。
そこへ伝令使リカスが、ヘラクレスがオイカリアに勝利して多くの捕虜を連れて来たと報告すると、ヒュロスはその中の美しい王女イオレに心奪われてしまう。凱旋したヘラクレスはイオレに自由を与えるが、戦いで父を失い祖国も奪われた彼女の心は、深い悲しみに沈むのみである。
ヘラクレスはこれから、武器を捨ててデイアネイラとの愛の暮らしに戻ると言い、トラキア人達の合唱もそれを称える。

<第2幕>
イオレが王女の身から捕虜に貶められた不幸を嘆いている。するとデイアネイラが、ヘラクレスがオイカリアを倒したのは愛するイオレを得るためという噂に言及し、嫉妬心を露わにする。イオレはヘラクレスとの関係を否定し、リカスもヘラクレスを弁護するが、嫉妬心に囚われたデイアネイラは聞く耳を持たない。
一方ヒュロスは熱い恋心をイオレに伝えるも、父を殺し祖国を奪ったヘラクレスの息子を愛することはできないと彼女に拒絶された上、愛などにうつつを抜かさず英雄の息子らしく振る舞えと諭される。しかしヒュロスは燃え盛る愛の炎をどうにもできない。
デイアネイラに裏切り者となじられたヘラクレスは懸命に自身の潔白を主張するが、彼女は夫が嘘をついていると決めつける。愛情の危機を感じたデイアネイラは、かつてネッソスに入れ知恵された「愛が蘇る血のついた服」を夫に着せることを思いつく。彼女はそれを仲直りの証としてヘラクレスの所へ持って行くようリカスに命じる。

<第3幕>
リカスが、デイアネイラの贈り物として届けた服を着たヘラクレスに毒が回り、引きちぎれた皮膚から血を流して激痛に悶絶する様を伝え、トラキア人達が英雄を失ったこの世の不幸を憂う。
ヘラクレスの最期の場面へと時間が遡ると、苦しむ彼はヒュロスに「まだ自分が生きているうちにオイタ山頂に運んで積み薪の上で火葬し、炎と共に天に昇らせてくれ」と頼む。
ネッソスの罠にはめられ愛する夫を失ったデイアネイラは、激しい後悔と悲しみで自分を責めるあまり、復讐の女神の幻覚を見て狂乱する。この惨劇を知ったイオレも、ヘラクレス一家の不幸に深い同情を寄せる。
そこへゼウスの計らいにより、ヘラクレスの不死の部分が天上へと運ばれ、そこで神々と共に暮らすようになったこと、またイオレとヒュロスは結ばれるべしとの命が伝えられる。若い二人は互いの愛を確認し合い、トラキア人達の合唱が天に昇った英雄ヘラクレスを称えて幕────。

この記事へのコメント

2014年03月31日 17:57
西洋の芸術表現の題材になることが多いギリシャ神話。学生時代岩波文庫で読みましたが,ごちゃごちゃして,何がなんやらさっぱりわかりませんでした。
図式的に絵で描いてもらえるというのは大変わかりやすくて良いですね。
こちらの記事を参照しながらなら,チンプンカンプンだったヘンデルの音楽劇が,まっとうに楽しめそうです。
2014年03月31日 21:58
Enriqueさん、

>ごちゃごちゃして
はい、全くそうですね。
色々な登場人物達が互いに複雑な関係になっているし、バリエーションも多くて一度読んだくらいでは何が何やら…です。

でもこの「ヘラクレス」はヘラクレス最期の日を扱っているだけで、登場人物も整理されていますし話の展開も自然なので、ヘンデルの劇的作品の台本としては、非常に分かりやすい部類です。
またそれだけでなく、心理的な踏み込みが深くて、内容的にも優れていると感じました。
ただ冒頭に書いた「物語の前に」の部分を知ってないと困るのですが、こういうのが西洋人と日本人の違いなのでしょう。
あっちの人(笑)の「常識」を押さえておく必要があるわけですね。

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