完全室内の「オルランド」DVD

「オルランド」の記事が続いていますが、今回はDVDを紹介します。

George Frideric Handel - Orlando (Opernhaus Zurich 2007) [DVD] [Import]
ArtHaus Musik
2008-09-01


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ヘンデルではまだ数少ない、日本語字幕付きオペラのDVDです。
「王侯貴族の娯楽のために作られた豪華絢爛絵巻物 今では気楽にご家庭で楽しめます」なる、しょーもないキャッチコピーに苦笑いですが、これを真に受けて見るとガッカリするのでご注意を。
なぜなら「豪華絢爛~」的な演出では全くないからです。
むしろシンプルで、「オルランド」の心理劇的な側面を強調したような舞台なのに。

台本ではこのオペラ、森・山・草原・洞窟などの自然に囲まれた屋外中心に物語が進行しますが、この演出ではそれを全て反転して、最初から最後まで完全な室内(しかも窓さえ1つもない)になっています。
解説によれば、ここは人里離れた「魔法の山」にあるサナトリウムで、(見えないけれど)周りには台本にあるような、自然風景が広がっている設定らしいです。
なので、日本語字幕に「森」「小鳥」「月桂樹」などの言葉が出てきたら、頭の中で想像&補って聴く必要がありますね。

サナトリウムなので、魔法使いゾロアストロはお医者さん、女羊飼いドリンダは看護士の姿で登場します。
アンジェリカとメドーロが2人の名前を残すのは、木の幹ではなくて黒板・・・
軍服姿の騎士オルランド役ミヤノヴィッチは、相当重症のうつ状態(←もちろん演技が、ですよ)で登場しますが、第2幕半ばで顔に墨?を塗りたくったあたりで凶暴度が増し、ついに斧を振り回して狂乱の場になります。

ここまでのくだり、この作品はやはり音楽がどうのこうのよりも、オルランド役の歌手の「演技」に注意が向いてしまいます。
ライティングの妙で、ミヤノヴィッチの顔は時々般若のように見え、本当に怖いです。
ただ彼女、元々非常に細身なのですが、もう少しタオルでも巻いて(笑)太くした方が良かったのでは?
細すぎて、男役としては「貧相」一歩手前なんですよね・・・。

ケバイ都会のおねーちゃん風のアンジェリカと、どこか純朴で垢抜けないドリンダは好対照でなかなか良いです。
しかし、二枚目であるべき?メドーロが不恰好なのが惜しい・・・特に第1幕は、まるで下手なチャプリンの物まねみたいで、これってわざとやってるんでしょうか?(←と言いたくなるくらい)
一方、ただ1人男性のゾロアストロ役、バスのヴォルフは立派な体躯と端正な顔立ち(スキンヘッドでも超イケメン)、もちろん歌もしっかりしていて、このオペラの要役にピッタリだと感じました。

この演出では、ゾロアストロが魔法ではなく手術で、オルランドを正気に戻します。
しかし台本を素直に読めば、嫉妬を克服して再び騎士の使命に目覚めたオルランドの、晴れがましい顔でエンディング・・・のはずが、オルランドは微妙な表情のまま、他の人物達も「いつまたオルランド御乱心になるか知れない、おおコワ~!」と逃げるようにして終わっています。
何かスッキリしないんだなぁ・・・(^ ^;)
なので、カーテンコールでミヤノヴィッチが(役を離れて)ニッコリ微笑んだ所で、やっと「ホッと」するんです。
「そこまで計算してんだよ」ってことなのかもしれませんが。(まさか!?)

全体としてこのDVDのおススメ度は、う~ん・・・ビミョーかもしれません。
上に書いたようなことを承知の上で見れば、日本語字幕もあるし結構面白いと思いますが、そうでないと作品そのものを誤解してしまう可能性もあります。
このオペラ本来の姿を素直に見せてくれるDVDが、他にあるといいんですけどね・・・

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この記事へのコメント

安倍禮爾
2010年07月07日 01:20
REIKOさん

 ジャケットのこの人、ユニクロ製みたいな上着とズボンですね。もう独墺系のこの種のものは、みんなこういう「現代化」がされていて、観ても(私は)全然楽しくないです。先日、職場でひき出しをさらっていたら、昔買ったVHSのタンホイザーが出てきて、古いので「時代考証」はばっちりでした。今やこの種の「現代化」に文句は言えないことはわかっていますが・・・。
2010年07月07日 03:40
やっぱり、デュモー選手のオルランドDVD発売、というのを待つのがよろしいかと。
絶対、見たいと思いません?彼のしなやかな体の動きに見とれつつパワフルな歌声に酔ってみたいわ。演技の上手さと体操の選手張りの体の柔軟さは「ジュリオ・チェザーレ」で、衆目の一致するところだし、顔の表情でその役の内面の葛藤まで表現できる!「ジュリオ・チェザーレ」のエンディングでの、生き返ったトロメオの表情と演技は素晴らしいと思います。
先日かぶりつき席で観た「モレナ山中のドン・キホーテ」でのフェルナンド=ヴァルモン子爵@危険な関係の演技も、隅々まで神経が行き届いていて、感服しました。
Mev
2010年07月07日 08:27
そうなんですよー。舞台装置と現代設定がちょっと行き過ぎ感あって、ミヤノヴィッチは好きなんですけどねー。病的なところを強調した演出という点ではすごく納得できますけど。もっと「本当は勇敢な騎士」である面もだして欲しい。これでは狂った草食系男子。だけど、それは体格の問題もあるし。やはり、男役は男性歌手が歌うほうが見ていて違和感がないのではないか、と、あらためて思います。
2010年07月07日 18:53
安倍禮爾さん、

>ユニクロ製みたいな
あっはっは~!・・・そうですね、確かにすごく安上がりというか。
白い上着みたいなのは、一応(お医者さんの)白衣です。
まあ「現代化」流行りなのは、オペラハウスはどこも金欠病ってことも関係してるのでしょうけど。

>VHSのタンホイザー
>古いので「時代考証」はばっちりでした
VHS・・・久しぶりに聞きました、そういう時代がありましたね。(笑)
ヘンデルもYouTube何かで見ると、昔の舞台は衣装なんか(いい意味で)時代がかっていて豪奢なんですが、突っ立ったまま歌ってるのが物足りないんですね~。
このDVDもそうですが、現代では演技力が要求されるので、歌手は大変だと思います。
これで舞台や衣装にもお金がかけられれば、言うことないのですが、
2010年07月07日 19:00
レイネさん、

>デュモー選手のオルランドDVD発売、というのを待つのがよろしいかと
・・・そうかもですね。
オルランド役は難しいので、これで「当たる」歌手が出れば、それが即この作品の人気上昇にもつながると思います。
デュモー選手(何故かみんな「選手」をつけるのが可笑しい)に期待したいと思います。

>顔の表情でその役の内面の葛藤まで表現できる
ああ、なるほど!
DVDでは「アップが映える」のも大事な要素ですよね。
顔もスタイルも良くて演技も上手くてもちろん歌も抜群で・・・って、ファンも随分贅沢な要求してると思いますが、でもそういうのに応えられるスターがいれば盛り上がりますよね♪
2010年07月07日 19:08
Mevさん、

>病的なところを強調した演出という点ではすごく納得
私もそれは嫌いじゃないし、病院や白衣って何かセクシーで、着眼点自体は面白いと思うんですが。
でもDVD自体をひとつの商品としてみた場合、ちょっと地味ですよね。
それにまだ一般には良く知られてない作品なので、これを見て(ヘンデルのオペラを)誤解する人がいるのでは?とちょっと心配です。
なまじ日本語字幕がついてるだけに、言葉と舞台のビジュアルの齟齬も気になるし。

>これでは狂った草食系男子
なるほど、ミヤノヴィッチの体型&容姿だと、確かにそういうイメージになっちゃいますね。
歌は、雄々しくも頑張ってると思うのですが。
見た目の印象ってすごく大きいので、難しい問題ですね。

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