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ヘンデルと(戦慄の右脳改革)音楽箱
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ヘンデルの声楽曲を中心とした、バロックの埋もれ名曲や、ちょっと珍しい音楽の話題など♪
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ついに出た!「階名唱 77のウォームアップ集」

2017/06/09 21:20
階名唱(いわゆる「移動ド」唱)の基礎練習に特化した教本が出ました。
著者は「固定ド」音感者のための「移動ド」習得・ソルフェージュ講座の大島俊樹さんです。
購入方法などはこちらを御覧ください。(自費出版です)
さっそく歌ってみましたので、感想とあわせて紹介しますね。

階名学習用に作られているため、通常のソルフェージュ課題集とは異なる特徴がたくさんあります。

1.音符のタマの中、または五線の下に階名が書いてある!
2.最初から色々な調が順不同でバンバン出てくる!
3.長調と短調が平等に出てくる!
4.階名や音程に集中できるよう、リズムは超簡単にしてある
5.まず分散和音的な練習から入る
6.旋律が音の性格を踏まえた動きで作られている
7.自分で作曲したくなってくる
8(オマケ).ハニホ音名が笑える


各項目をもう少し具体的に説明すると ────
1.ドレミ…は d, r, m, f, s, l, t(ソルフェージュでは「シ」を「ティ」とすることが多いため) の略号で、まだ五線譜から階名読みすることに慣れていない人でもすぐに練習できます。
それじゃ勉強にならないって?
そんなことはありません、まず階名で歌ってみることが大事なのです。
やっているうちに、階名の組み合わせと音程の関係、それぞれの階名が持つ性格、音が動くパターンなどが体に浸透してきます。
五線から自力で階名を読み取るのは、「浸透後」で構いません…というか、それができていないうちに無理やり階名読みしようとするから難しくなってしまうんですね。
少し慣れてきたらドリルを五線譜に書き写し、略号なしでも歌えるかどうか確かめるなど、力試しの方法はいくらでもあります。
まずは階名を歌詞だと思って歌ってみてください。

2.階名唱は調号の数による難易度の違いが全く生じません。
例えばドリル5番(調号♭1つ)と8番(♭5)つはどちらも「ド・ミ・ドー」始まりですが、絶対音感病に罹患していないごく一般の相対音感の人なら、片方が歌えればもう一方も全く同じことなのです。
ハ長調、あるいは「調号の少ない調の方が簡単」というのは、音名一辺倒の音楽教育がまねいた誤解でしかありません。
また、調により演奏に難易度の違いが生じる多くの楽器と違い、人間の声はそれに全く影響されない便利な楽器であることも分かると思います。
しかも声はいつでも自分の体と共にあり、タダ(笑)で自由に使えて減ることもなく、メンテもほとんど必要なしですね。
だから、まず声で音楽の勉強をするのが理にかなっているのです!

3.長調優先で短調がそのオマケ的な音楽教材が多い中、最初から双方平等に扱うことで、短調に対する苦手意識がつかないようになっています。
また、長調と短調の違いを感じることも大切です。
歌っているうちに、同じ「ミ」でも長調と短調ではイメージが違うなあ…などと気がつくようになったら、いい線行っていますよ!

4.これは嬉しいですね、リズムの勉強はまた別の話。

5.この教本では音階内の階名を「安定音」と「緊張音」に分け、前者を色々なパターンで組み合わせた短いドリルがまず最初に並んでいます。
「ド・ミ・ソ」「ラ・ド・ミ」のみの分散和音的な動きは、広い音程を含むため、慣れないと戸惑うかもしれません。
私が最初歌った時は、6番の「ド↓ミ↑ドー」に「えっ?」となり、何とか低い「ミ」は取れたものの、続く「ラ↓ド↑ラー」で「ド」が出ませんでした…普通の歌にはこのような動きが滅多になく、難しかったんですね。
分散和音系ドリルは「安定音はいつでも取れるように」という著者の方針によるものですから、練習しましょう。
楽器で補助する時は「ド↓ミ↑ドー」と鳴らしそれを覚えたら、「ドだけ」を鳴らして自力で「ミ」を取る練習が良いと思います。
(短調系の場合は「ラ」だけを鳴らして、他の音を取る練習)

6.教本の最初に、各階名の性格や進行パターンに関する説明があります。
それを踏まえてドリルを歌うと、理屈だけでなく体でも階名それぞれの個性が分かってくるでしょう。
えっ、階名に性格がある!!?…と思ったそこのアナタ(笑)、あるんですよもうこれはメッチャあるんです!!
野球やサッカーを思い出してください、様々な個性や役割を持った選手の連携が上手く行った時に、バーン!と点が入るでしょ?
これと同様に、例えば長音階なら「ド」を主将として「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」の7人でチームを作っているのです。
この7人はみな性格が違い、調性音楽というのはそれを踏まえて作られているのですから!

7.これは6と関係します。
ドリルの最後の方はだいぶ「曲っぽく」なっていますが、それでも「微妙にぎこちない」「そんなに良いメロディーとも思えない」と感じる人がいると思います。
これは著者も「図式的」と書いている通り、ドリルの旋律が基本的な音の動きに沿っているだけで、遊びや意外性に欠けるためです。
実際の音楽は、歌い(演奏し)やすさを考え「安定音」の間に適宜つなぎの音を入れたり、印象づけるために少々変則的な動きが入っているものです。
名曲と言われるものは、そのへんのサジ加減が絶妙なんですね。
ドリルを歌っているうちに「もう少しマシ?な曲が作れそうな気」がしてきたら、ぜひ挑戦してみてください。
もちろんその際は、手がかりとして階名を大いに役立てましょう。

8.階名と音名が違うことをはっきり示すために付してあるハニホ音名が、「ヘトヘト」や「ホニハニ」で面白いです。
この「ハニホ…」を「ドレミ…」に置き換えると、いわゆる「固定ド」唱になりますが、いずれにせよ音名は音の高さを示すだけの名前であり、何ら音楽的文脈を表していないため、これで歌ったところで何も得られません。
「ハニホ」の場合は時間の無駄で済んでも、「(固定ドの)ドレミ」は階名学習の妨害にしかならないことに気づいてください。

同じドレミなら、音楽的に意味のあるドレミ(階名)で歌いましょう!
それがあなたの音楽人生を楽しく豊かにします♪
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「固定ド」はイタリア音名でなく、フリガナ音名である

2017/05/27 22:24
階名(移動ド)学習の障害となっている「固定ド」音名を使った音楽教育を批判すると、「固定ド」はイタリア音名だからと反論されることがあります。
しかし日本の「固定ド」がイタリア音名と別物だということは、こちらのサイトの記事にもあるように明らかです。
これについて、自分でもう少し考えてみました。
何かもうひと押し、「固定ド」陣営?にガツンと言ってやりたい(笑)気持ちがするからです。

   ド レ ミ ファ ソ ラ シ

↑↑↑これってイタリア人に読めます????
カタカナを知らなければチンプンカンプンですよね?

イタリア音名だと主張するなら、Do Re Mi Fa Sol La Si と書かなければ変ではありませんか?
楽典ではそうなっていますよ。
英語やドイツ語の音名は、子供や初心者に発音を教えるため「エフ」「アー」「エス」などとカナを添えることはあっても、「F」「A」「Es」のように原語表記で使うのが普通です。
文中でも「5小節目上声部のツィス音は…」ではなく「Cis」と書きますね?
しかしなぜか Do Re Mi …だけ、カナ表記が広まっているのです。

こうなった理由や経緯はよく分かりません。
階名唱の指導で使っていたカナが流用されたからとか、「ドレミの歌」の影響、幼児・子供向けピアノ教本(「ド」じゃなくて「ど」の場合も!?)の説明がルーツなど、色々考えられるでしょう。
いずれにせよ、日本の文字になった時点でもうイタリア音名ではないと考えるべきだと思います。
「radio」は英語だが「ラジオ」は外来の日本語、みたいな事例です。

そしてこのカナ化したドレミの代表的な用途?が、初心者がよくやる音符の側にドレミを書くことです!
漢字や英単語などに「読み」のフリガナを振るのは日本人特有の行為ですが、それの楽譜バージョンですね。
アルファベットではフリガナにならないので、カナ化したドレミの出番なのでしょう。
(元々カナのハニホ音名がここで利用されなかったのが本当に残念!)
また、フリガナを振らないまでも、脳内で音符をドレミに直して「読んで」いる人がたくさんいますね?

どうも多くの日本人は、楽譜を読むの「読む」を、そこから音を取って歌うとか楽器を演奏して音楽化することでなく、何か言葉的なもの(具体的にはドレミ…)に変換することと勘違いしているようなのです。
楽譜は漢字と違うのに!!!
音楽が図示された楽譜を、そのまま作曲家の指示図として見ればよい(それが一番カンタンで速く読める)のに一々言葉に直すとは!
視唱だけでなく、器楽演奏においても一旦ドレミをかます(笑)ものと思いこんでいる人が多いのは本当に驚きです。
(だったら五線譜なんかやめて、文字譜にすればいいのに!)

そして楽譜の書き込みだろうが脳内フリガナだろうが、一度覚えた(多くはハ長調の)カナの振り方を変えるのは面倒だ、カナの振り方が何通りもあるなんて冗談じゃない!と考える人が、教える方も習う方も大半なのでしょう。
これが「固定ド」の蔓延する思考回路と言えます。
だから「固定ド」音名はフリガナ音名 ←うん、気に入った(笑)♪
ここで特に問題なのは、相対音感の人が「固定ド」教育しか受けてない場合、フリガナ振れても音取れずになることです。
こういうケースは日本に相当あるのではないでしょうか?

そんなこと言ってるがオマエ、階名だって楽譜にカナ振ってるやつ山ほどいるだろ〜〜!
↑↑↑と突っ込まれそうですが、階名は楽曲分析とか音を取るという音楽的目的のためにドレミを賢く利用しているのであって、ドレミの奴隷と化している「固定ド」教育とは、やっていることの意味が全く違うのです。
・ドレミがフリガナでしかない「固定ド」
・ドレミが便利な音楽ツールとなっている「階名」(移動ド)


オマケ:「固定ド」音名を、イタリア音名ではなく「一般呼称」と表現しているサイト
一般呼称!…なるほど、ある意味非常にうまい言い方です。
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読んで歌おう〜講談社文庫「日本の唱歌」(上・中・下)

2017/05/13 18:06
臨時記号なしの旋律が多く、楽譜を階名(移動ド)で読みながらある程度音が取れるようになった人が、練習として歌うのに最適です。

日本の唱歌[上]〜明治篇(163曲)
日本の唱歌[中]〜大正・昭和篇(178曲)
日本の唱歌[下]〜学生歌・軍歌・宗教歌篇(138曲)

よほどの唱歌通か年配の人でなければ、知らない曲の方が多いはず。
曲が分からないまま解説を読んでも面白くありませんので、ぜひ歌ってみましょう!
もちろん楽器に頼らないで、ですよ。
楽器を使わないんだから、寝転がってでも出来ますね(笑)。

またこの本の解説では、ドレミが使ってあれば全て階名で、音名はドイツ語…とキチンと使い分けられています。
このことについて断り書きなどは一切なく、編者はドレミを階名に使うのは当たり前と思ってるんですね。
注:ある時期まで、日本ではそれが常識だったのです!
例えば、ト長調で記譜されている「故郷(ふるさと)」には ───

長音階の文部省唱歌としては珍しく、「ファ」の音が多く出て来るが、それが節にやわらかさを与えて快い。

─── とありますが、これは「固定ド」一辺倒の人には意味不明でしょう。
「固定ド」ではファが一回しか出てこないし、「ファがやわらかい」も階名のドレミだけが持つ独特の感覚だからです。
他にも階名ならではの解説が多数あり、特に古関裕而作曲の「愛国の花」で「シ」の使い方が上手いとあったのには、私も以前からそう感じていたので嬉しくなりました。
なお、佐々紅華 作詞・作曲「毬ちゃんの絵本:(第一)六段の唄」はロ短調で、最後の部分が「ラシレーミレミドシド ラシレミシーラファラ ミーミードシーラ」と、階名がそのまま歌詞になっています!

時代順に見ていくと、日本人が自分達の音感と折り合いをつけながら、西洋の音楽を学ぼうと努力してきた過程がよく分かります。
明治になり学校で洋楽を教えることになったとはいえ、教材は全く無いし指導できる人もおらず、当初は試行錯誤の連続でした。
「螢の光」や「霞か雲か」など、外国の旋律に日本語の歌詞をつけて教材とする一方、雅楽などをやっていた音楽家が、見よう見まねで西洋風の国産唱歌を作ったのです。
「春のやよい」「金剛石」「紀元節」…四分音符が並んでいる単調なリズム、雅楽調の旋律が取って付けたような「ド」で終わるぎこちなさなどを見ると、邦楽しか知らなかった明治人が、洋楽の決まりに従って作曲するのは、相当の困難があったと推察されます。

しかしそれも20年ほど経つと、現在まで歌い継がれている「ふじの山」「われは海の子」など、日本人の手になる名曲が登場してくるのですから、その吸収力の速さには感動さえ覚えます。
その後大正から昭和にかけて、いわゆる「唱歌っぽい」類型に陥ってしまった一面もあるとはいえ、西洋音楽に日本人的な感性を上手く折衷した歌の様式が確立しました。
その頃「よく歌われた」と解説にある曲は、なるほどと思わせる魅力があります。

また、出来がイマイチの唱歌も載っていますが(解説には大抵その旨指摘してあります)、いつしか「消えてしまった」曲を知るのも面白かったです。
やはりいくら文部省や専門家が、良いと信じて作ったものを押し付けても、ウケないものはウケないんですね(笑)。
今でも愛唱されている歌は、詞も曲も良い…大衆の耳や感性によるふるいって、バカにできないと思いました。
ぜひこの本の唱歌をたくさん歌って、それを確かめてみてください。
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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LFJ)2017、今年も堪能♪

2017/05/07 22:50
ゴールデンウィーク、都心の大音楽イベントとしてすっかり定着したLFJに、今年も行ってきました。
3日間とも少し暑いくらいの晴天で、テンション上がりましたね〜♪
今年のテーマは「ラ・ダンス〜舞曲の祭典」↓↓↓



このところ何年かは、抽選を利用して有料公演のチケットを取っており、「行く日を決める」⇒「適当に時間を空ける」⇒「希望が殺到しそうな公演は避けて」⇒「同じ会場が続かないように」⇒「抽選に外れることも想定して少し多めに」申し込んで、当たった公演に行っています。
テキトー(笑)に選んで後は運任せなので、今年購入できた公演は、演奏者はマリンバの神谷百子さんくらいしか知らないし、曲目も現代物や民族系ローカル曲など、一般的なクラシック音楽とはかなり違うものになってしまいました。
でも結果的にそれが当たりだったんですね!

【132】メキシコ民族音楽の楽団による、バロック音楽と中南米民族音楽をドッキングさせた演目、歌・ダンス付き
【323】マリンバ、パーカッションのソロで、バッハと現代音楽
【336】マンドリン、ギター、コントラバスのトリオで各種の舞曲
【351】マリンバ、ビブラフォンのソロからクァルテットまで、ピアソラや現代音楽


【132】は、バロック・ギターでおなじみのガスパール・サンスやサンティアゴ・デ・ムルシアの曲で始まって、それがいつの間にか民族音楽へと続く構成。
ティプレという、ウクレレのような小型ギターや、低音用に使われていた親指ピアノのお化けみたいな楽器、マリンボルの音が新鮮でした。
終演後、舞台上のマリンボルを見ようと人だかりができていたところに、片付けのために出てきた演奏者が、普通なら楽器を持ってサッと立ち去るところを、わざわざ前に差し出して皆が触れるようにしてくれたんですよ!
子供も大人も、マリンボルの金属のベロ(みたいなところ)をビンボン♪とはじいて「うわ〜」「へえ〜」と驚いていました。

【323】は、いきなりスネアドラムだけ!の楽曲で始まり、バッハの無伴奏チェロ組曲のマリンバ版を挟んで、その次のカンジェロージ「バッド・タッチ」が、今年聴いた中では一番面白かったです。
実はこの曲、ノイズや加工した人声などから成る音(楽)は、あらかじめ録音されたものがスピーカーから出てるだけ。
演奏者(というより演技者?)はそれに合わせて、暗くした舞台上でオレンジ色に光る棒を操ります。
その動きが音(楽)とピッタリ合っているため、まるで光る棒から音が出ているように錯覚する感覚が何とも言えなかったです。

【336】は、マンドリンを生で聴いたのは初めてだったかも!?でしたし、主に伴奏パートでしたがLFJで聴きたくても今までチケットが取れずにいた、クラシックギターの音色も楽しめました。
【351】は、マリンバとビブラフォン2台ずつの四重奏で、大好きなミニマル音楽(ライヒの「マレット・クァルテット」)がプログラムの最後を飾っていたのが嬉しかったです。
やはり生演奏はサウンドに立体感があり、繰り返す音の波に身を任せる陶酔感をタップリ味わえました。

私ももう音楽を聴き始めて長いですし、定番曲の少し良い演奏程度では「ふ〜〜〜ん」で終わってしまうので、今年くらいの変わった編成やプログラムがちょうどいいのかな?と思いました。
毎年LFJのプログラムには、曲目や演奏者が「何これ?誰この人?」なのもチラチラ混じってますが、むしろそのような場合であるほど、つまらないことはやってないですね。
メジャーな公演のチケットを取り損ねてもガッカリするなかれ、本当にLFJならではの聴きモノは、意外なところに隠れているかもしれませんよ。

有料公演の他では、ガラス棟に出店していた古書店で、読みたかった小泉文夫「歌謡曲の構造」を安価でゲットできたのがラッキーでした。
恒例?ソフトクリームの歩き食べや、夕食時には売り切れてることがあるので、早目に食べた屋台のガパオライスやタコライスも美味しかったです。
空き時間に寄った丸の内JPタワーKITTE内に、こんな入場無料の博物館を見つけたのも収穫!(どうして今まで気づかなかったのか!?)
─── ということで、来年の(あるんですよね?)LFJも楽しみです♪
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森の水車〜思い出したぞ階名入りの歌(2)

2017/04/29 17:49
昭和の流行歌についてあれこれ考えていたら、ファミレドシドレミファ〜♪という階名が歌詞に織り込まれている森の水車(作詞:清水みのる 作曲:米山正夫)を思い出しました。



昭和17年に女優・高峰秀子の歌でレコード発売されましたが、曲調が英米的で時局にそぐわないと発禁処分になってしまいました。荒井恵子のラジオ歌謡や、並木路子のレコードで広まったのは戦後のことです。
詳しくはこちらのサイトで

自分が生まれるずっと前の曲ですが、小中学生の頃にテレビの懐メロ番組やら古いSP録音をLPに復刻したレコードを、昭和一桁生まれの両親が楽しんでいて、何となく側で聴いていたらメロディーをあらかた覚えてしまったんですね。
ですから昭和20〜30年代のものはもちろん、戦前の流行歌や戦時歌謡、愛国歌、軍歌のたぐいまで、ヒット曲なら大体知っています。
「森の水車」は、NHK「思い出のメロディー」等で荒井恵子が何度か歌っていて、渡辺はま子の「蘇州夜曲」や藤山一郎の「東京ラプソディ」などと共に、懐メロ番組で登場を楽しみにしていた曲のひとつです。
では階名を見てみましょう♪

ドーレミファミミドー レレドシドーー
ミーファソラソソミー ファファミレ#ミーー
ドーレド↑ラソソミー ドーレド↑ラソーー
レーミファ#ソラファ#ミレ (ソーラシドレシラソ)
レ↑ドシーラソーー (ソ↑ファミーレドーー)

      ★カッコ内は属調転調とみなして読み替えた場合

ソソソド ソ  ソソソド ソ
ファミレドシドレミファーー
ファファファファ↑レ シ  ファファファファ↑レ シ
ソファミレドレミファソーー
ソソソド ソ  ソソソド ソ ラーシドラソーー
↓ドーレミファミミドー レードシドーー


こちらのサイトで指摘されているように、この曲は前奏(戦後の並木路子盤では間奏にも)にドイツの曲が引用されていて、それが英米的というか洋風?に聴こえたのが発禁処分の主な理由らしいですが、旋律の階名からもだいぶアチラ的な臭い(笑)がします。
まず1行目から「ファ」と「シ」が登場、戦前・戦中の歌に多い日本的なヨナ抜き長調ではないことが分かります。
そして2行目は1行目の三度上をピッタリなぞっており、ここで「カエルの合唱」や「静かな湖畔」などの、海外起源の輪唱曲を連想する人も多いのではないでしょうか。
「ミレ#ミ」と、レを半音上げた刺繍音の動きも洋風です。
さらに4行目で「ファ#」が登場、5行目で属和音上で半終止、これもクラシック音楽で常套のアチラ風展開ですね。

実際の階名唱で、このような一時的転調(この後すぐ原調に戻る)の際に読み替えるかどうかはケース・バイ・ケースです。
読み替えない場合、「ファ#」には派生音の読み(例えば「フィ」など)を当てます。
一方、読み替えれば派生音は必要なく、音程も取りやすくなります。
読み替えない場合の「レ↑ド」は不自然な印象ですが、読み替えた「ソ↑ファ」はある程度階名唱に慣れた人なら、おなじみの音程ですね。

サビに入りコトコトコットン♪の次でファミレドシドレミファーと階名がそのまま歌詞に出ます。
歌詞の締めではなく中間で出ること、ファで始まりファで終わる半端?な階名なのが少し不思議です。
この部分に「仕事を励みなさい」を持ってきて、「ソファミレドレミファソー」の箇所を階名にした方がまだ収まりが良いと思うのは私だけ?

そしてその間に挟まっているファファファファ↑レ シ!
パッと見「固定ド」かと思うような異色の階名 ─── でも自分的にはこの辺が気に入ってたんだろうなと思います。
やはりヨナ抜きズッポリの曲より「そうじゃない」懐メロが、オシャレな印象で好きだったんですね。
実は、当時の長調で書かれた軍歌や愛国歌・戦時歌謡を調べてみると、ヨナ抜きではない曲も結構あるのですが、多くはヨナ抜き的な特徴が曲の随所に残っています。(例:愛国行進曲隣組
しかし「森の水車」はそれがほとんど無く、やはり当時としてはかなり洋風だったのでしょう。

作曲側は、同盟国のドイツ風なら検閲を通ると踏んでいたようですが、当局にしてみれば「洋風」は皆「英米風」だったのかもしれません。
ただこの曲が昭和17年に発禁にならなかったとしても、当時の時勢を考えると大ヒットは難しかったと思われます。
むしろ昭和20年代に日の目を見たことが、ヒットにつながったんですね。
終戦後「東京の花売り娘」「憧れのハワイ航路」「あこがれの郵便馬車」など、妙に明るく健康的な歌が好まれた一時期があったのです。
「森の水車」もそれにピッタリはまったのでしょう。
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すかんぽの咲くころ〜思い出したぞ階名入りの歌(1)

2017/04/26 22:15
前回紹介した「J-POP進化論」を読んでいたら、昭和の流行歌&歌謡曲に関する資料が欲しくなり、そういえば実家にそんな本があったはずだ…と思い、父から何冊か借りてきました。
その中に、日本人の心に残る名曲をたくさん残した、中山晋平と山田耕筰の出版楽譜の表紙(竹久夢二などのイラスト入り)がカラー写真で載っていて、何気に見ていたら ────北原白秋 詞、山田耕筰 曲 すかんぽの咲くころというのがあるじゃないですか。

ああ、すかんぽの歌…昔よく歌ったような?
ええと「♪土手のすかんぽ ジャワさらさ〜」だったっけ? 「昼はホタルが…」
…あ、ああっ!?最後に階名入ってた!

はい、こういう曲です↓↓↓(もともと1番だけしかありません)



最後、「夏が来た来た ド、レ、ミ、ファ、ソ」です!
原曲はニ長調ですが、もちろん移調した演奏もあり、いずれにせよこの詞は音名でなく階名ですね。
ニ長調で歌うと、最後の「ソ〜」がA(イ)音で、ちょうどA=440Hzの音叉と同じ高さになります。
(いわゆる「固定ド」ではこれを「ラ」と言っているため、詞とズレます)
「ドレミファソ」部分は作詞家と作曲家の間で事前に相談したのかどうか分かりませんが、当時ごく普通にドレミが階名に使われていた証拠の一つになると思います。

では全体の階名も見てみると ……

ドードーミソソーソ ファラドラソーーー
ラソソラーソソソ ミーミレドーー
レードレミーソソソ ミソソーソーー
ラソソファ↑ドーー↓ファ ミーミソミレドーー
ドードドドドミソーー ドレミファソーーー
ミーソミドーミドソ ド レ ミ ファ ソーー


まず、童謡といえば定番?のヨナ抜き音階でなく、ファがたくさん使われていることが目を引きます。(シは無いですが)
冒頭、ドミソ和音を駆け上った次の「ファラドラソー」は、シューマン「楽しき農夫」にも全く同じものが登場します。
「楽しき〜」に日本語歌詞をハメた大正時代の唱歌については、以前こちらで記事にしました
器楽的な音型なので子供に歌いやすいとは思えませんが、背後に「ファラド」の和声を感じるのが良い音程で歌うコツでしょうか。

さらに4行目の「ファ↑ドーー↓ファ」、これもすごい!
ファから5度上がってまた戻る、ファから大きく跳躍するのは難しいのに ─── でもここがこの曲の山なんですよね。
凡百の童謡にこんな動きはなく、私がこの曲を好きだったのも、ココが気に入ってたからだと思います。
というか、私は長調の階名では「ファ」と「ラ」が好きなんですね。
この2つが活躍する曲に、ハマる傾向があるんですよ(笑)。
「すかんぽ〜」では、ラはさほど特徴的な使われ方をしてませんが、その分ファがいい仕事してると思います。

最終行、前半はホルンやトランペットを連想させる、ドミソだけのラッパ音型で、歌詞「夏が来た来た」とのコンビネーションがとても爽やかな印象。
そして「ドレミファソー」とソ終わり…! これも珍しいです。
「ドミソ」や「ファラド」など、和声から直取りした西洋音楽的な旋律が目立つ中、最後くらいは西洋音楽の定石を破ってやるぞ、とでも思ったのでしょうか?

私はこの曲を、小学生の頃家にあった童謡のLPレコードで知りました。
その録音では「小学尋常科」の部分が「小学一年生」と歌われていたように記憶しています。
当時まさしく通学路の途中、線路脇の土手にすかんぽがたくさん生えていて、そこでよく遊んでいたため、この曲の情景はとても身近でした。
これとセットでよく歌っていた「みかんの花咲く丘」が、新潟県(柑橘類が育たない)に住んでいた自分には、どこか異国の光景だったのと対照的。
この歳になって、近所の土手(笑)を歌った童謡が、畏れ多くも北原白秋&山田耕筰という超大者コンビの作品だったと知り、正直驚いています。
しかも最後が階名で終わってるなんて!
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「J-POP進化論」の階名パワーは空回り?

2017/04/20 21:27
ふと思い立って、本棚のJ-POP進化論という本を読み返してみました。
階名を使い、日本人が持つ土着的な音楽感覚と大衆音楽の関係や、洋楽の影響などを論じていた記憶があったからです。


序論に相当する第1章、安室奈美恵《Can You Celebrate?》の旋律を例に上げる際、さっそく「階名で言えば…」という表現が使われています(11ページ)。
その後16ページと115ページ、計3回「階名」という言葉が出てきますが、今私がこの本を読み返してみて驚くことは、筆者の佐藤良明氏(1950年生まれ、米文学を専攻した表象文化論の教授で、音楽の専門家ではありません)が、ごく当然のようにドレミを階名に使っており、またその用法や音楽の捉え方が世間でも普通だと思って本全体を書いていることです。

まず、階名とは何ぞや?なる説明が(良くも悪くも)ありません。
「移動ド」という言葉も出てきません。もちろん「固定ド」も無し。
「この本ではドレミを(音名でなく)階名に使います」という断り書き?さえなく、文中にドレミが使ってあれば全て階名、一方で音名は英語のCDEで、階名と音名に違う言葉を当てるという使い分けも明確です。
(す…素晴らしい!!!)
そして学校で「長調の曲は主和音を構成するドミソのいずれかの音で始まる」と習ったのだそうです。
おそらく著者は、(音大などでなく普通の)学校で階名を教わって、それは音楽の専門家でない自分でも常識的な音楽認識方法なのだから、この種の本を手に取る人であれば何ら説明の必要はない、と信じて書き進めていたと思われます。

私が学校やクラシック系の音楽教室で「固定ド」が猛威をふるっている現実を知り大ショックを受けたのはつい去年のことで、自分はずっと階名的に音楽を聴いてきたため、この本を買って読んだ2000年当時、その書き方には何の疑問も危惧も感じませんでした。
それどころか、こういう観点から「日本のうた」を分析した本をかねてから待ち望んでおり、それが手軽な新書で出版されたことが嬉しくて、「ふむふむなるほど、それで次は?」とかなりコーフン(笑)しながら夢中でページを繰っていた記憶があります。

しかし階名が絶滅危惧種であると知ってしまった現在、この本を読むと「こ…これは痛い!」─── 著者でなくても冷や汗が出ます。
例えば最初に譜例が出る17ページ、ト音記号&ヘ長調の楽譜の第2線上に並ぶ16分音符が、本文で「レレレレ…」と表現されています。
著者はここで定石を外れた「レ始まり」の旋律に注目してるのですが、「固定ド」一辺倒の人なら「何これソソソソ…じゃないの?」となるでしょう。
またこの曲では、コードネームの「B♭」が「ヘ長調のファラド」と、これまた当然とばかり階名で説明されています。
コードネームを知らなくても和音の働きがイメージできて便利なのですが、これも「固定ド」の人には全く意味無というか、コードネームを知っていたらばミスプリか著者の誤記だと勘違いするでしょう。

1999年初版ですので最新の本ではありませんが、かといって大昔の本でもありません。
出版当時すでに「固定ド」は普通だったはずで、この本のドレミの使い方に異議をとなえている人がいるかも?とAmazonのカスタマーレビューを見たら、「移動ド(階名)」「固定ド」以前の、「楽譜が読めない」「音楽の基礎知識がない」と称する人達が、容赦なく低評価を付けていて愕然としました。
(学校の音楽の授業って何やってるんですかね〜〜〜?)
タイトルにJ-POPとあるせいで、クラシック音楽系の人はあまり読まなかったのでしょうか、少なくとも現時点でドレミ階名に文句を言っている人はいません。
とはいえ「階名の説明が面白い!」という評価もなく、もしかして文中の「階名」という言葉に何の注意も払わず、その意味も考えずに読み進んでしまった人が大半だったのかもしれないです。

この本は、土着的な5音音階に親しんできた日本人が、明治以来の音楽の西洋化の中で、四七抜き長調・四七抜き短調・ニ六抜き短調などの音階を経てどう現在のJ-POPまでたどり着いたのか、表面だけ聴けば音楽はずいぶん「西洋化」したけれど、腹の部分ではどうなのだろう?等を、実例を多数あげながら論じているものです。
そして考察の基本ツールとして使われているのがドレミを使った階名です。
だからもし「先生あのですね、実は『固定ド』というものが…」などと著者に話そうものなら、去年の私以上に大ショックを受け、1ヶ月くらい寝込んでしまうかもしれません…。

著者の説が正しいかどうかはともかく、階名パワー大爆発!の今どき稀有な本ですので、興味のある方は(もう中古だけですが)ぜひ読んでみてください。
特に第4章《腑におちるメロディ ─── #をめぐる「ソ」の攻防》は、再読した今回も非常に面白かったです。
短調曲において「ソ」があるか無いか、もしあるならただの「ソ」かそれとも半音上げるのか?
たったこれだけのことで、昭和初期からJ-POPの時代まで、大衆音楽の歴史が語れちゃうって…!?
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