ヘンデル~オペラ「アグリッピーナ」あらすじ

<物語の前に>
ローマの第4代皇帝クラウディオと皇妃アグリッピーナの間には子供がいない。アグリッピーナは前夫に授かった連れ子のネローネを、次期皇帝にしたいと密かに願っているのだが…



<第1幕>
ブリタニア遠征に出ていたクラディオが、海難事故に遭い亡くなったとの知らせを受けたアグリッピーナは、我が子ネローネを皇帝にするチャンスと早速策略を練る。彼女はネローネに、民衆に施し物をして慈悲深い善人を演ずるよう命じ、家来のパッランテとナルチーゾには彼らが自分に好意を持っているのを利用して、ネローネを次期皇帝として推薦するよう言い含める。
ところが計略通りネローネが皇帝に迎えられようとする矢先、クラウディオが将軍オットーネに助けられ、一命を取り留めたことがわかる。無事ローマに帰還したクラウディオは褒美としてオットーネに皇帝の座を譲ると決めている。しかしオットーネにとっては帝位より、相思相愛のポッペア(実はクラウディオも彼女を愛している)と結ばれることの方が重要であった。
アグリッピーナはこれを利用して、ポッペアに「オットーネはあなたをクラウディオに譲って皇帝の座を得ようとしている」と吹込み、さらに「自惚れたオットーネに強く関係を迫られて困っている」とクラウディオの嫉妬心をあおるよう入れ知恵をする。夜這いにやってきたクラウディオにポッペアがその話をすると、怒った皇帝はオットーネに帝位を与えるのは止めると約束する。

<第2幕>
パッランテとナルチーゾは、愛情を餌にアグリッピーナに利用されていただけと気づく。一方、英雄として皇帝の月桂冠を受けるはずだったオットーネは、皆から「裏切り者」と罵倒され、事態の急変に大きなショックを受ける。しかし完全にオットーネを見切ることが出来ないポッペアは、巧みに彼の真意を確かめて誤解をとき、自分達がアグリッピーナの罠にはめられたことを知る。ポッペアはアグリッピーナの裏をかこうと画策し始める。
策略の証拠隠滅と邪魔者を消すために、アグリッピーナはオットーネ、パッランテ、ナルチーゾに互いに殺し合いをさせようと考える。そしてクラウディオに、傲慢なオットーネでなく従順なネローネを皇帝にするよう強く迫る。乗り気でなかったクラウディオだが、これを渋々了解してしまう。

<第3幕>
ポッペアは自分の部屋にオットーネとネローネを順に招いて、愛の証拠を見せるからと言い2人を別々のドアの向こうに隠す。そこへ訪れたクラウディオは、ポッペアに強引に迫っていたのはオットーネでなくネローネであるという彼女の言い分に、名前を聞き違えるはずはないと半信半疑。ポッペアが証拠を見せましょうとネローネを呼ぶと、何も知らずにドアの向こうから出てきた彼の姿に、クラウディオは驚き怒る。ポッペアの大芝居全てを陰から見ていたオットーネは、ポッペアと堅い愛の絆を確かめ合う。
ポッペアの罠にまんまと嵌ったネローネの報告を受け、アグリッピーナは自分の策略が破綻寸前なのを悟る。しかもパッランテとナルチーゾはアグリッピーナの企みを、クラウディオに密告していた。
そこでアグリッピーナは「ネローネを皇帝にしようとしたのは、他の愚民から帝位を守るため。クラウディオ死亡の知らせは嘘だと思っていた」と取り繕う。この二転三転する状況に翻弄されたクラウディオの決断は「ネローネはポッペアと結婚せよ、オットーネには当初の約束通り帝位を与える」だった。しかし帝位など要らず愛だけが欲しいと訴えるオットーネとポッペアに、クラウディオは彼らの結婚を許し、帝位はネローネに与えると宣言する。結婚の女神が降り立ち、ローマの繁栄を願って幕────。

この記事へのコメント

ヘンデル大好き
2014年10月04日 01:22
本文のあらすじと翻訳プロジェクトの対訳のおかげで、『完璧鑑賞』を終了しました。凝った脚本ですので、鑑賞に和訳は必須でした。このオペラ、脚本もアグリーッピーナの性格描写の音楽も素晴らしい。私のはGadiner盤です。この盤はコミカルな味付けですが、楽しめる演奏と歌唱ですね。最近名演で評判の高いJacobs盤は辛口の演奏と噂ですね。権謀術数のアグリッピーナ。調べていたら、歴史上のごアグリッピーナご本人はオペラ以上の猛女(美人)だったみたいですね。ネロの母でカリグラの妹ってことですからね。凄すぎる。その意味で、リアリズムの強い演出も面白そうです。Jacobsの海外盤は+DVD付きのもが発売されているみたいで、それも楽しみですね。明日からはSabata歌唱のタメルラーノを英訳片手に悪戦苦闘して聴きます。
2014年10月06日 01:10
ヘンデル大好きさん、『完璧鑑賞』お疲れ様でした&ありがとうございます。
対訳を利用してヘンデル作品を楽しんでいただいて、こんなに嬉しいことはありません。
「アグリッピーナ」はレチが多いので、私自身が楽しむためにも…と対訳してみたのですが、登場人物達の虚実入り混じった言葉のやりとりが分かると、本当に面白いオペラですね。

>Jacobs盤は辛口の演奏と噂ですね
辛口といいますか、心にもない嘘を言う場面や傍白の部分の皮肉っぽい表現や、通奏低音の入れ方も凝っていて、大人のコンゲーム的なテイストが強調されている印象です。第3幕はアリアのカットが多く残念ですが、そのぶん話の展開はスピーディーです。

>歴史上のごアグリッピーナご本人
台本では史実がアレンジされているので、彼女の悪女ぶりもだいぶ小粒になっているようです(笑)。

>タメルラーノ
こちらは超シリアスなドラマですね!どうぞお楽しみください♪
ヘンデル大好き
2016年07月24日 01:04
もう前回投稿してから、2年近く経っていますね。NHK・BSで先日、『アグリッピーナ』(ベンゲルブロック指揮)を見ながら、急に「そうだ!ヤーコプス盤をまだ聴いていない」ことを思い出し、アマゾンで調べたら、DVD付きが1枚在庫で、CDのみの6割価格で掲載。この放送が始まったばかりだったので、焦ってオーダーに成功。閑話休題。そういう少々不純な動機ながら、『対訳プロジェクト』に前回同様にお世話になりながら、この盤の完聴を果たしました。今回はレチタティーヴォは『戯曲』なのだと思い知りました。仏文学の心理劇みたいで、DVDで指揮者、演出家や歌手連の発言の中に熱いドラマへの思いも知りました。カットが多かったり、劇的な音楽進行に、反論もあるみたい(特に、本家英国の大先生や聴衆)ですが、ガーディナー盤も完成度は高いとはいえ、今回のこの盤3枚はあっという間に聴き終えるくらいの推進力があり、楽しめました。次はヤーコプスのオルランドですね!
2016年07月24日 18:08
ヘンデル大好きさん、コメント&完聴報告ありがとうございます。

対訳を利用してヘンデルを楽しんでいただき、私も嬉しいです。
ヤーコプスは音楽上の「劇的」演出が上手いですね!
彼の手にかかると、《アグリッピーナ》のたくさんのレチタティーヴォも、凄くリアルに迫ってきます。
《オルランド》も面白いですよ!ぜひお楽しみください。

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