修正ミーントーンで「イタリア協奏曲」ピアノ版

修正ミーントーンによるバッハの「イタリア協奏曲」第一楽章(ピアノ版)です。



前回の記事で、A♭とG#の兼用音を作るべくウルフを二分割したミーントーンでひとまずOK・・・と書いてますが、実際にはそれだと少々問題があるので、結局「半音階的幻想曲とフーガ」の時と同じ、ウルフ三分割の修正ミーントーンで演奏しています。
(通常のミーントーンとは2音違うのみ)
【使用音律の五度圏図・再掲】↓↓↓


ミーントーンのウルフはバカ広いので、二分割だとまだ15セント強広い五度(まともに五度として使うのは厳しい)が、今度は二つできてしまいます。
(【C#】-【 G#・A♭】-【E♭】)
そこにカスる箇所があるんですね。
例えば73小節目↓↓↓ 時差がありますが、やはりちょっと・・・


105小節目、変ロ長調で主題が出る箇所↓↓↓ 一瞬ですが同時打鍵。


どちらも四度なので五度ほど狂いは目立ちませんが、それでも耳のご機嫌(笑)によっては「ん?今一瞬ヘンな音が」になるんですよ。
三分割すると広い五度は三つに増えますが、+8セント強の広さになるので、この程度のカスリならほぼセーフになります。
さらに、もう少し低い方がしっくりくるかなあ・・・と感じていたE♭が少しD#寄りになり、ちょうど良い高さになるオマケもつきました。
何と言っても「半音階的~」と同じ音律で行けるなら、超便利だし。(^ ^;)

ただし第一楽章では、左手に出てくるC-G-Cのような五度と四度だけの和音(ミーントーンでは鈍い響きになる)や、三つの広い五度の両脇の二音(C#とB♭)がぶつかる箇所が、少し気になるところです。
↓↓↓63小節目、相性の悪い二音の出会い(ほんの一瞬ですけど)


それでも全体的にはこの「ほぼミーントーン」音律で、旋律も和音も違和感なく聴けると思いますがどうでしょうか。
「平均律ど~たら曲集」(爆)のバッハだからって、何でもかんでも均(なら)した音律で弾く必要はないってことですね。
あれは特殊な曲集だというのを忘れたらいけません。
次回は第三楽章をチェンバロ版で ──── ♪

この記事へのコメント

2012年05月14日 10:52
確かにこの修正ミーントーンだと、実になめらかに、何の引っ掛かりもなく流れますね。平均律では聞くことの出来ない実に美しい響きですね。確かにここでヴェルクマイスター音律を持ち出す意味はないかも知れません。
88小節は、提示部の28小節を、
平行短調の中で表しているのですが、gisへ持って行くことによって、必要以上に際立ってしまっているような気がします。一方は低い音ですが、gis - b(bフラット)という音程が、緊張感を与えているのでしょうか。
2012年05月14日 12:17
先ほど通しで1回聴きましたが、1回聴いただけでは気になる箇所が全く感じられないですね・・時間のある時にでも、もう少し聴き込んでみたいです。ともあれ、このウルフ3分割修正型MTってもう少し前の時代の曲用にも使えないですかね?(フロベル、ベーム、ラインケン、ブクステ、パッヘル、フィシャーetc) 場合によってはこれこそ大白鍵もとい「大発見」じゃないですかね。
2012年05月14日 17:35
「バッハはイタリア趣味を取り入れたが,ミーントーンは取り入れなかった?」というのが定説?だとするとまたまた定説をうちくだく試みですね。難所見事クリアですね!
時期と曲にもよるのでしょうが,常識的に考えればイタリア風楽曲を取り入れたらその音律もセットで研究するのが普通でしょう。確かにレギュラーなミーントーンそのままでは無くて,バッハ自身同じように音の調整をしていたということでしょうか。細かく微調整された音律でなくて,2音の修正ミーントーンで行けるのはナカナカ痛快ですね!
何時どの分野でも理論屋さんは,統一的見解を狙いますが,実際に作曲や演奏する立場からすれば,その時期時期のスタイルや個々の楽器において調整して使えるソリューションを得ているハズですからね。
第三楽章も期待しています。
(ところで,言及の箇所とは違うのですが,最初のテーマのヘ長調がハ長調になった5小節6小節目が低く感じられたのですが,これミーントーンだからですね?)
2012年05月17日 03:54
ogawa_jさん、

>実になめらかに、何の引っ掛かりもなく流れますね
ミーントーンは音の間隔がかなりデコボコなので、(ウルフに引っかからなくても)「合わない」曲だと旋律がギクシャクしたりするのですが、全くそういう部分はありませんね。
このことからおそらく、ある程度は純正長三度が残っている音律が想定されていたのだと思います。
出版されているので、バッハの周辺以外の人も弾いたはずですが、その中には(まだ?)ミーントーン系の音律を使っていた人もいたはずですし。

>gis - b(bフラット)という音程
これがウルフ領域を挟む音程なんですよね・・・
従来のミーントーンではまずい音程なので、そうではない音律なら「ちょっと使ってみよ♪」になるのかもしれませんね。
28小節目のhと88小節目のgis、カッコ良くて大好きなんですよ。
(なので思い切り強調して演奏してますが)
平均律だと、hが中途ハンパに高くて上ずってしまい、全然決まらないのです。
⇒ピアノだとこの音を特に強調することなく、アッサリ弾いている人が多いです。
2012年05月17日 04:09
kotenさん、

>気になる箇所が全く感じられないですね
ありがとうございます。ですが三分割しても、記事に書いた「時差でG#とC#」の箇所、ちょっと響きが揺らいでるのが分かりますね。
ほんの一瞬ですが・・・曲のテンポが速くて、すぐ次へ行ってしまいますので、大きな傷ではありませんが。
一方、冒頭早々三小節目で、右手E♭と左手B♭が同時打鍵する箇所は、(広すぎる四度なのに)全然分かりませんね。(笑)

>もう少し前の時代の曲用にも使えないですかね
使えると思いますよ。
♭1つ~#1つくらいの調なら、かなり可能性高いと思います。
G#とA♭の混用があって困るとか、As型・Gis型・Dis型の調律替えが面倒・・・な場合に有用ではないかと。
#側はC#までミーントーンと同じなので、イ短調曲のピカルディ終止でA-C#が純正長三度になるのがポイント高いと思います。
(多くの修正ミーントーンでは、ここが純正でなくなっている)
2012年05月17日 04:28
Enriqueさん、

>バッハ自身同じように音の調整をしていたということでしょうか
それはなんとも言えませんね・・・修正ミーントーンは他にも沢山の種類があり、この音律以外にも良好に演奏できるものは多いと思うので。
今回の試みは、ミーントーンに「最低限の修正をして」という条件で、二音だけいじればひとまず良好! ────「そんなに均す必要はないヨ♪」と証明したかっただけですので、これが作曲時のバッハの音律と言うつもりはありません。
(使っておいてこんな事言うのも何ですが)この音律では「ない」と思います。
ただ、これは1つの「ソリューション」ってことですね。
で、手の込んだ(笑)不等分律や、1/5や1/6コンマのミーントーンよりも、シンプルで説得力のあるソリューションというのがミソではないかと。

>ヘ長調がハ長調になった5小節6小節目が低く感じられた
あ、そうでしたか!
(そこは私は特に何も感じませんでしたが)おっしゃる通り、ヘ長調~ハ長調のあたりが完全ミーントーンのせいだと思います。
五度が狭いので、五度上で主題が反復された時、「上がつかえてる」(笑)ように聴こえたのでしょうね。
音律の不具合って、人により気になる部分がだいぶ違うようですね。

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