超悪女のオラトリオ「アタリヤ」

ヘンデルが本格的に、英語によるオラトリオに目覚めた時期の作品「アタリヤ」(Athalia)を聴いてみました。1735年のロンドン版による、世界初録音です。

Handel: Athalia
Deutsche Harm Mundi
2010-08-24
Handel


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「アタリヤ」はこの2年前に、オックスフォードで初演されていますが、ロンドン版では当時ヘンデル・オペラで活躍していたカストラートのカレスティーニのために、祭司ヨヤダ役がイタリア語でアリアを歌うのが特徴です。
つまり彼が、母国語で歌えるように(つまり英語は下手だった)という配慮です。

またへ長調のオルガン協奏曲 HWV 292 が、最終楽章に合唱を伴った形でオラトリオの最後に追加されています。
その結果この「アタリヤ」ロンドン版は、英語のアリア、デュエット、合唱に加えて、オペラを髣髴とさせるイタリア語のアリアや器楽の聴き所も含む、何でもアリ的な作品になっています。
これを雑多で散漫と取るか、バラエティに富んでいて面白いと取るかは、人それぞれでしょうが・・・。

タイトル役のアタリヤ(新共同訳聖書ではアタルヤ)は、息子であるアハズヤ王が殺されたのを知って、王位を継ぎそうな者達を皆殺しにして自分が女王にのし上がり、異教の神バアル信仰を推し進めた・・・という、とんでもない悪女です。
しかしアハズヤ王の子で、虐殺を逃れ密かに養育されていた王子ヨアシュが7歳になった時、彼は祭司ヨヤダの作戦により引き出され、民が王の冠を与えたので、アタリヤは王座を追われ(聖書の記述では)殺されてしまいます。

なかなか面白い話だと思うのですが、台本に人物の心情をえぐる突っ込みや緊迫感が不足しているため、どうも盛り上がりに欠けます。
それがこのオラトリオが、ヘンデルが付けた音楽は素晴らしいのに、イマイチ「傑作」とされない理由のようです。
特にこのロンドン版では、前述の伊語アリア(5曲あり、どれも6~7分と長いです)の部分で、ドラマが完全にストップしてしまい、それに聴き惚れていると物語なんかど~でも良くなってしまいます。(笑)
まあここは無い物ねだりはせずに、素直に音楽を楽しむのが得策でしょう。

さてこのCD、良く統率された気品溢れるオケと、量感のある合唱が素晴らしいです。
それに比べるとソロ歌手が、概して引っ込んでいて大人しい感じ。
録音(ミキシング?)のせいかもしれませんが、台本のユルさがここにも影響してると言えなくもありません。
アタリヤ役、ソプラノのマクグリーヴィが、多少ハッタリをきかせた悪女ぶりで目立っているくらいでしょうか。
聴きモノの伊語アリアも、カウンターテナーのザッゾは非常に端正な歌い方で、これはこれでいいのでしょうが、どうしてもオペラと比べると地味ですね。

王子ヨアシュ役のボーイ・ソプラノは、子供だからしょうがない・・・とはいえ、もう少し上手い子はいなかったのか?と思いますし。
ヒョロヒョロ&ヨレヨレで、発音も舌足らず。
気にしてる人が多い?ヨシェバ(王子ヨアシュを助けてかくまう)役のリアルは、役通りの清楚な歌いっぷりです。
別に悪くはありませんが、そんなに印象に残るわけでもないかと。
全体的には良い演奏の部類に入るCDですが、スゴイ!スゴイ!と熱狂できるとこまでは行きませんね。

で、お気づきかと思いますが、似た名前の人物が何人もいて、混乱するんですよ。(笑)
このアタリヤ関係のエピソード、聖書を読むとまた面白いので、その話は次回に

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この記事へのコメント

Mev
2010年09月09日 09:28
聞いてみたいですが、しばらくCDを買うのをセーブしているので、いつか、聞きたいものです~。
やはりオペラとオラトリオじゃ、作曲家も演奏者も力の入れ方が全く違うと思います。歌舞伎と謡ぐらい違う気がします。 ではなぜオラトリオを敢えて作ったり演奏したりするか。教会のためだったとしか思えません。つまり、これは信者と神職者のためのささやかな娯楽(あるいは讃美歌の一種としての芸術?)なので、いささか禁欲的なほどに盛り上がりに欠けているのではないか。。。と想像しております。
アルチーナ
2010年09月09日 11:26
うむ~~・・そうですか・・
リッカルド・プリモと同じメンツなので期待できそうな気がしたのですが。
これはオペラじゃないですけれど、全曲版って難しいですよね。

>何でもアリ的な作品になっています。

まさか約300年後に、「雑多で散漫な」まま、演奏されて聴かれるとはヘンデルも思ってなかったでしょうね(笑)

これもマルチバイだとそれ程高くないんですね。
う~~ん、ちょっと考えよう♥
デュモーのオルランドは高すぎ!!
2010年09月10日 02:57
Mevさん、

>教会のためだったとしか思えません
一般的には(表向きは)そうかもしれませんね。
ただヘンデルの場合は、「教会」ではなく「劇場」で、チケットを売って行う「興行」としてオラトリオをやってたので・・・
(劇場でオラトリオをやることに関し、けしからん!と不快感をあらわにしていた人達もいたくらい)
イタリアでは、オペラ上演が自粛(禁止?)されていた四旬節に、オペラの代わりとしてオペラ歌手を使い、オラトリオやってましたから(ヘンデルのオラトリオ上演も、これに倣ったもの)、教会の「ため」というより、教会の目を欺く隠れ蓑として、オラトリオという名の「娯楽」に興じていたと言えなくもないですね~♪
ただやはり演奏の際には、オペラほど「歌いまくる!」とはいかず、押さえ気味になるようで残念です。
2010年09月10日 03:05
アルチーナさん、

>リッカルド・プリモと同じメンツなので
>「雑多で散漫な」まま、演奏されて聴かれるとは
そうなんです・・・「ロンドン版」のせいもあるのでしょうが、色々詰め込んで面白いのだけれど、何か「メインディッシュ」が欠けてる感じです。
まだ「初演版」を聴いたことがないので、比べてみないと「ロンドン版」の好悪は分かりませんが。

>マルチバイだとそれ程高くないんですね
そうですね、2枚組新譜・新録音にしては、安かったです。
よろしければどうぞ♪

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