ジュリオ・チェーザレ~対訳完成!名言集

先月上旬からやってました、「オペラ対訳プロジェクト」のヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」(Giulio Cesare)完訳いたしました~♪\(^o^)/
大体分かっている物語でも、実際に1つずつ日本語に直してみると、あらためて気づくことや面白いことも多かったです。
・・・ということで、3回に分けてジュリオ・チェーザレ名言集を特集したいと思います。
第1回は「チェーザレ&クレオパトラ編」

★ エジプト側に殺された、かつての盟友ポンペーオの遺灰を収めた壷を前にして、チェーザレの伴奏付きレチタティーヴォ(第1幕第7場)

偉大なるポンペーオの魂が
その灰の周りを 姿もなくさまよっている
君の勝利はもう影だ
その偉大さも、そして君自身も影となった
栄華を誇った人間もこうして終わるのだ
昨日戦いの中 生きて世界を支配した者も
今日は砕かれ塵となって壺の中にいる
我らは誰しも、ああ悲しいことに
最初は土から生まれ、最後は墓石となる
哀れなる人生、そのもろさよ
お前は息のひと吹きで生まれ、ひと吹きで消える


人生の無常・・・平家物語の冒頭を思わせる部分です。
ここは、意味を分かって聴くのとそうでないのとでは、天と地ほども印象が違うはず。
人生を達観したチェーザレの、深淵な言葉・・・
なお「土から生まれ」「ひと吹きで生まれ」は、聖書で神がアダムを土くれから形作って、息を吹き入れて命を与えたことを指しています。(たぶん)

★ リーディアの姿に変装して、その美しさでチェーザレを魅了したクレオパトラのアリア(同上)

愛の言葉をささやき
熱い視線で見つめれば
美しい女に不可能はないわ
矢を放ちそこなうことさえなければ
一発で胸を射ぬくの


・・・・・一度言ってみたいセリフですが、私にはできません。

★ 王宮でトロメーオと会見し、彼の殺意を察したチェーザレのアリア(第1幕第9場)

抜け目の無い狩人は 獲物を襲う時
静かに身を隠して進む
悪行を企む者は
その策略を決して見透かされまいとする


ホルンのオブリガートが付く、人気アリアです。
私がヘンデルのオペラに目覚めたのはこの曲だったので、最初にこの近辺を訳しました。
狩人なので、狩の象徴であるホルンが鳴るのですね。
大相撲の野球賭博が問題になっていますが、暴◆団関係者は最初はそれと悟られないように巧みに近づき、カモと関係を作るのだそうです。
相撲部屋でこの曲が流れていなかったことが、残念でなりません。(笑)

★ トロメーオ討伐に行こうとするチェーザレを引き止めながら、リーディア姿のクレオパトラがつい口走るレチタティーヴォ(第2幕第8場)

リーディアですって? 私はあなたを
守るためなら戦いにすっ飛んでいくわ
地獄の果てにだって クレオパトラは下りて行く
(自分に) (ああ、私何を言ったの?)


これで正体がバレちゃいました。(笑)
この頃にはもう、クレオパトラはチェーザレを(策略ではなく)真剣に愛しています。
マジになっちゃったんですね・・・(^ ^;)
チェーザレももちろん彼女を愛していますが、今は攻め入る敵と戦うことを選びます。

来るなら来い、私は恐れないぞ
チェーザレは恐怖など知るものか


これチェーザレの辞書に恐怖の2文字はない!ってやろうかとも思いましたが、それじゃナポレオンになっちゃうし。(笑)

ヘンデル大好き♪ヘンデルWeb祭り

この記事へのコメント

2010年07月13日 09:19
チェーザレのオペラ評で「儚い名声の・・」というのがあってイマイチよく分からなかったのですが、今回ポンぺーオの骨壷の場を読んで問題が解決しました。ありがとうございます。

私はクレオパトラの正体がバレるところ、結構好きなのですよね。
ここは音だけ聴いていても、演技出来る歌手だと面白いですよね。

va tacitoのホルンも納得が行きました。

やっぱり・・・台本はキチンと読んだほうが面白さ倍増ですね。
なるほど・・
Mev
2010年07月13日 23:34
チェーザレ、完訳!すごいです、すばらしいです! 
冒頭はなるほど平家物語のようであり、また「兵どもが夢の跡」(すごいGOOGLEで変換したらちゃんとツワモノが兵とでましたよ~)の芭蕉の句を感じます。
ローマ時代にはキリスト教はなかったから本物のチェーザレはアダムのたとえはしなかったとは思いますが、ヘンデルの時代だからコッテコテのキリスト教的世界観ですよね。
そして勇敢なるチェーザレのアリア、すごく好きです。今日たまたまアーサー王のDVDを見たんですけど、このアーサーのアリアの歌詞も似ています。英雄のイメージは似ているんでしょうか。その点、悪役は色々いて面白いなあなんて思ったりしています。
2010年07月14日 01:23
アルチーナさん、

>クレオパトラの正体がバレるところ、結構好き
そうですね、私もここはクレオパトラがいい意味で「フツーの女性」に感じられて、好きです。
彼女に親しみを感じる部分ですね。

>キチンと読んだほうが面白さ倍増ですね
オペラにもよるとは思いますが・・・
この「チェーザレ」の場合は、登場人物の書き分けが良く出来ていて、面白いと思いました。
「リナルド」はつまらない部分も多いですよ。(^ ^;)
2010年07月14日 01:39
Mevさん、

>兵どもが夢の跡
ああ、そんな雰囲気もありますね。
虚しさ、哀れさ、儚さ・・・色々なものが心に迫ってきます。
ただ、この骨壷シーンのような奥深い部分は、全体としては例外ですね。

>本物のチェーザレはアダムのたとえはしなかったとは思いますが
共和制ローマ時代、キリスト教はまだないですが、いわゆる「旧約聖書」に当たる部分はすでにあったので、こっそり読んで知っていたかも?(笑)

>英雄のイメージは似ているんでしょうか
皆で共有しているイメージがあったかもしれません。
「類型」で人物を表現すること、わかりやすいとか。
2010年07月14日 06:13
おお、素晴らしい!!
ありがとうございます。ちょうど今「ジュリオ・チェーザレ」にはまっていました。
昨日はダニエル・ドゥ・ニースのクレオパトラを聴いて(見て)、うお~と思っていましたが、検索してREIKOさんの記事も発見しました。
またYouTubeでも例のヒメカさんの動画も見ましたよ~。(以前聞かせていただいたときは「ジュリオ・チェーザレ」のアリアという意識がなかったのです。)
きのう聴いたのはこれなんですが、チェーザレ役のカウンターテナーはいまいちです。
クレオパトラはまあまあかな?
全部聴いてないですが全体的には良い雰囲気のように思います。
http://ml.naxos.jp/album/CD2042-3
2010年07月14日 18:21
Ceciliaさん、

>ちょうど今「ジュリオ・チェーザレ」にはまっていました
それはナイス・タイミングです~♪
対訳、楽しんでください♪(^ ^)

>ダニエル・ドゥ・ニースのクレオパトラ
ああ、あれは面白い&素敵ですよね。
見てると一緒に振りをマネしたくなりませんか?
歌いながらストレッチになりますよ。(笑)

>きのう聴いたのはこれなんですが
試聴してみました。
チェーザレ訳の歌手、ソプラノまで歌う男性で、ソロ・アルバム(10年以上前の録音)を持ってるのですが、相変わらずあまり上手くない(爆)
不安定で、これじゃチェーザレには心もとないかも。
残響多めで、雰囲気のある録音だとは思うのですが。
2010年11月02日 21:34
やっほ~!オペ対ゲストブックに「チェーザレ」転載のオファーがあったよ~。
2010年11月02日 21:41
オペ対管理人さん、

え~♪ほんとですか、ビックリです。
(一般的にはまだまだマイナーな作品なので・・・)
嬉しいやら恥ずかしいやら。
訳した甲斐があるというものです。
これからも頑張ります~♪
2011年01月30日 08:52
先日このオペラのアリアニ曲を公の場で歌ってきました。
ヴァロッティ調律&A=415Hzです。REIKOさん、kotenさん、Enriqueさんたちには聴いていただきたいですが、伴奏者にブログの話をしていませんので公開出来ないのが残念です。ばっちりと言う出来ではないですけれど、気持ちよかったです。念願かなってうれしい私です。対訳も非常に参考になりました。ありがとうございます。
2011年01月30日 15:19
Ceciliaさん、

>このオペラのアリアニ曲を公の場で歌ってきました
歌われたのですか!
クレオパトラのアリアですよね?
(うう・・・聴けないのが残念ですけど)

>「気持ちよかったです」
・・・でしょうね~!\(^ ^*)
ヘンデルは旋律が伸び伸びしていて、喉や声帯も喜びそうです。
対訳もお役に立てて嬉しいです。
訳してよかったです!

>ヴァロッティ調律&A=415Hzです
なるほど、ヴァロッティってそういうところで使われてるのですね。
この音律は凸凹(平均律との高低差)が少ないので、クセがなくて比較的扱いやすいと思いますが、普段440Hzに慣れていると415は低いですよね。
ヘンデル大好き
2014年09月15日 05:43
カナダのソプラノのK.Gauvinのファンです。ヘンデル全曲盤で彼女の最近の3組を調達。その中の目玉はA.Curtis指揮の「ジュリオ.チェザーレ」でした。この曲はJacob、Minkowskyのものを何年も死蔵してきました。ようやく、自分のイメージでのクレオパトラが眼前に出現。対訳プロジェクトの翻訳をプリントアウトし、当CDのCh番号を追記すると同時に、マーカーで当ブログの名言とチェザーレ、クレオパトラ、セスト、コルネリアのアリアにマーカーで色分け。3日間、この長大なオペラを通しで3回。また、各アリアのつまみぐいを登場人物ごとにしました。本当にこのオペラはヘンデルの最高傑作ですね。シナリオの場面転換と曲想の変化。登場人物の性格、感情、心境が緻密、かつダイナミックに表現されたアリア。アリアが終わるたびに、『ブラボー』と叫んでいる自分を発見。それというのも、場面ごとの雰囲気や登場人物の歌詞の曲想、感情のひだまで完璧に表した名『対訳』がそばにあったからです。多くのヘンデルのオペラを収集しながら、単に筋書きを追い、好きな歌手の歌声に耽溺しているのではなく、自分では『完璧鑑賞』というレヴェルに進める時ほど、至福な時はありません。当ブログとプロジェクトに心から感謝申し上げます。
2014年09月15日 16:28
ヘンデル大好きさん、コメントありがとうございます!
対訳を利用してヘンデルの名作を楽しんでいただき、私も大変嬉しいです。
確か「チェーザレ」は最初に手を付けたもので、その後他の作品の対訳もやるにつれ、今では不備な点も多いかと感じていますが、鑑賞の手がかりとしていただけたのなら幸いです。

>チェザーレ、クレオパトラ、セスト、コルネリアのアリアにマーカーで色分け
私もそれ良くやってます。台本の構成というか、歌手への「配分」がどうなっているか興味深いですよね。オペラ・セリアってこうしてアリアを積み上げてできているんだなというのが、良く分かります。
「チェーザレ」では、クレオパトラがアリアの数も多く、その曲調や心理描写の豊かさ・深さが出色ですね。

これからもヘンデルのドラマチックな世界をどうぞご堪能ください♪
3階のサラリーマン
2016年09月11日 18:03
いつも楽しく読ませていただいています。対訳の方も活用させていただいています。本当にありがとうございます。たまたまジュリオ・チェーザレの対訳を見ていて、気がついたのでご連絡しています。第三幕で瀕死のアキッラが真実を告白する場面ですが、訳をさっと読んだ感じでは、すべてアキッラが悪いように読めたのですが(私のつたないイタリア語の知識では全く自信がないのですが、cheが誰をさしているのか、ということなのですが)、私は以下のように解釈していました。
まず、ポンペーオを殺したのは私(アキッラ)だと、でもそれは、ポンペーオがコルネリアを妻にするためにチェーザレに反逆を計画したためだからだと。Che per averla in moglie, contro Cesare ordì l'alta congiura... の主語はポンペーオでは?と思っていたのですが、間違いでしょうか。
2016年09月12日 18:00
3階のサラリーマン様、はじめまして。
対訳のご利用、コメントありがとうございます。

ご指摘の件ですが、
1.アキッラが(チェーザレの歓心を買うため、チェーザレに追われて逃げてきた)ポンペーオを殺したらどうかと(トロメーオ王に)提案した
2.(さらに)アキッラは(ポンペーオの未亡人)コルネリアを自分のものにするためチェーザレも殺そうと企んだ
…で間違いないと思います。
1は台本中、ここで初めて明かされた事実です。2は、第1幕・第6場のトロメーオとアキッラのやり取りで分かります。
ポンペーオが死んだことを喜ばずに、酷い仕打ちだと吐き捨てたチェーザレの様子を聞いて怒ったトロメーオ王を見て、アキッラは王の機嫌を損ねたチェーザレを殺してその褒美にコルネーリアを得るという作戦を思いついたのでしょう。
ですから「Che per averla in moglie~」のCheの主語もアキッラで、矛盾はないと思いますがどうでしょうか?
3階のサラリーマン
2016年09月13日 22:26
ご回答ありがとうございます。
なるほど。確かに矛盾はないのですが、ドラマトゥルギーの観点からいかがでしょうか。おっしゃるとおり1.は新事実ですが、2.はReikoさんの解釈では既知の事実です。それをわざわざ瀕死のアキッラに言わせるでしょうか。
もし、2.の主語がポンペーオだとすると(Aquilla より Ponpeoの方が、Cheの近くにありますし)、一応、新事実になって、
「コルネリアにこれだけは伝えてほしい。貴女の夫ポンペーオを殺すことを提案したのは(トロメーオではなく)このアキッラだ。
 酷いと思うだろう、でも聞いてほしい。ポンペーオという男は、自分にとっては、自分が愛するコルネリアを妻にし、加えてチェーザレ様に刃向かった憎きやつで、どうしても生かしておけなかったからなのだ。(それだけ以前からコルネリアを思っていたのだ。そしていっしょになりたかったのだ。)」
ということになり、盗人にも一分の理、的な感じになるのではないでしょうか。
そして、結局は死んでしまう上に、許されず(信じてもらえず?)海に捨てられてしまう悲劇・・・。
ちょっと考えすぎ(作りすぎ)?ですかね。ハハハ。
2016年09月14日 21:08
3階のサラリーマンさん、再コメントありがとうございます。
 
「ポンペーオという男は、自分にとっては、自分が愛するコルネリアを妻にし、加えてチェーザレ様に刃向かった憎きやつで、どうしても生かしておけなかったからなのだ」の御意見ですが、第1幕・第3場によると、ポンペーオが殺されたのはアキッラが美しいコルネーリアを見初める以前の出来事ですから、アキッラがトロメーオへに「ポンペーオを殺したらどうか」と提案した時点では、コルネーリアへの愛情は存在してなかったことになります。
ですから、瀕死のアキッラが言いたい「コルネーリアを愛していた故のことなんだ」は、チェーザレを殺そうと企んだことだけに関係しているのではないでしょうか?
そもそもコルネーリアはすでにポンペーオの妻だったのだから「Che per averla in moglie」とそれ以下の部分がポンペーオにかかるのは変ですし、ポンペーオとチェーザレがコルネーリアを奪い合った事実とかあるのでしょうか?
★このCheは少し前のdigli che quell'Achilla の che を繰り返してるもので、「~ということ」を彼女に伝えてくれ…の接続詞だと思ってます。(関係代名詞ではなくて)
伝えたい内容が2つあり、それが「che consigliò di Pompeo~ 」と「Che per averla in moglie, contro~」ですね。
動詞はどちらも三人称単数の遠過去で、主語がquell'Achillaと私は解釈してます。
Che per averla in moglie以下がポンペーオを主語とするなら、こちらのCheは関係代名詞?でしょうが、それならCheの直前にPompeoがないと変だと思います。
3階のサラリーマン
2016年09月15日 20:37
コメントありがとうございます。なかなか難しいですね。
なお、ポンペーオとチェーザレがコルネ-リアを奪い合った事実はないようですが、ポンペーオがチェーザレと袂を分かつ頃に、チェーザレが勧めた女性を断って、反チェーザレ派のコルネ-リアと結婚したという事実はあるようですね(ウィキペディアの情報ですが)。
ところで、次はどのオペラを訳されるご予定ですか?やはり、訳を全部読むと、あらずじだけではわからないいろいろなことがわかるので、本当にありがたいです。楽しみにしています。
2016年09月16日 21:34
3階のサラリーマンさん、納得していただきありがとうございます。

>次はどのオペラを訳されるご予定ですか
そうですね…せっかく楽しみにしておられるのに申し訳ありませんが、私としてはヘンデルのオペラで重要なものはオペ対に対訳が揃ったと感じてるので、当面は新しいものに手を付ける予定はないのです。
むしろオペラよりも「サウル」「サムソン」「ベルシャザル」などオラトリオの方を何とかできないかと思ってますが、聖書を下敷きにしてるものはどうも腰が引けちゃう…というところです。
3階のサラリーマン
2016年09月19日 11:51
ご回答ありがとうございます。
そうですか、それは残念ですね。小生は、合唱曲があるという点でヘンデルはオペラよりオラトリオ!と思っているのですが、オラトリオは英語なので、わざわざ対訳にしなくても、まだなんとかなるんですよね。その点イタリアオペラはつらい・・・。まあ、自分で少しずつやっていくしかないですかね。
音律のところも非常に興味深く拝見しています。ロマン派のピアノ曲に変な調性が多いのは小生も前から気になっていて、目から鱗が落ちました。これからも楽しみにしています。

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