デュモーが頑張る「オルランド」全曲盤

1733年の初演当時は評判ビミョーでしたが、現代ではヘンデル・オペラの最高傑作の1つとも評価されている、「オルランド」(Orlando)全曲盤を聴いてみました。
マルゴワール指揮、オルランド役は79年生まれのカウンターテナー、クリストフ・デュモーです。

Orlando
K617 Records France
2010-07-13
Handel


Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る

HMVの情報ページはこちら

ライブ録音のため、歌手が歌いながら左右に動いたり、若干の物音がします。
ですが、舞台上の空間を感じさせる臨場感のある録音は、悪くありません。
また、前回の記事でも書いたように、台本なしのブックレットであらすじの書き方も不親切なので、これから買う方はその点御注意を。

この「オルランド」は、一応ヘンデルの「魔法オペラ」の1つですが、台本の性質が他とは全く違っています。
主人公の騎士オルランドは、思いを寄せている中国の王女アンジェリカ(アフリカの王子メドーロを愛している)に振り向いてもらえず、怒りと嫉妬でついに発狂してしまいます。
そして幻覚の中で、地獄に下りたりアンジェリカを洞窟に投げ込んだりしますが、それら異常体験の後に、魔法使いゾロアストロにより救われ、理性を取り戻します。
愛の葛藤を克服したオルランドは、アンジェリカとメドーロの愛を許し、再び本来の闘う騎士へと戻っていくのでした・・・

↑↑↑・・・という、主人公の心の成長が見所なので、何よりもオルランド役が歌手・役者の両面で優れていなければなりません。
その点ここでのデュモーは、役への没入度や歌唱の緊張度の高さで、リスナーの耳と心をひきつける魅力が十分です。
特に第2幕最後の「狂乱の場」は、ただならぬ雰囲気とテンションで、大変ドラマチック!

「Ah stigie larve!」の伴奏付きレチタティーヴォと「Vaghe pupille」のアリアで始まるこの部分、時々アルトやメゾのヘンデル・アリア集に入ってますが、正気の曲の間で突然発狂されても付いていけないし(笑)、フツーっぽく歌ったのでは「どこが狂乱なの?」になってしまうので、やはり全曲盤で聴くのが一番です。
ただこのCD、デュモーが熱演してるだけに、映像がないのがほんとに惜しいです・・・どんな演技だったんでしょうか、気になりますね。

一方デュモー以外の歌手は、彼に比べると平凡で、どこが悪いってわけじゃないけど、何がいいってわけでもない(笑)、要するに魅力のしきい値を超えてないのが残念です。
唯一の男性低音ゾロアストロは、他の登場人物を俯瞰する特異な立場にあり、それなりの威厳や貫禄が必要ですが、イマイチ締まりのない歌唱だし、メドーロ役のフュマはデュモーと良く似た声だけに、メリハリ不足の歌唱で優劣がはっきり付いてしまいます。
メドーロの名アリア「Verdi allori, sempre unito」も、ただ歌ってるって以上のものは感じませんね。

女性陣2人では、本来控え目&ウブなキャラの羊飼いの娘ドリンダの方が、アンジェリカよりも目立ってるような。
オケもちょっと緩くガサガサ気味で、デュモーの覇気が空回りしそうです。
う~~む、ミンコフスキやファソリス入道を呼びたい!
まあ、デュモー1人で持ってる全曲盤かもしれません。

この「オルランド」、もしも自分が演出家だったら「アルチーナ」と並んで、演出をやってみたいヘンデル・オペラの1つです。
音楽がどうこうよりも、台本の魅力ですね。
ドット絵相関図付きあらすじと台本の特徴は、次回の記事で・・・。

ヘンデル大好き♪ヘンデルWeb祭り

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

Mev
2010年06月30日 09:51
欧州の中世の話とかあるいは中国の古典だと、よく発狂する人が現れますよね。あるいは悲しみや怒りのあまり死ぬとか。現代でも「とんでもない事件」が時々起きますが、今のようにテレビや新聞で騒ぎになることもなかったその昔に伝承的に残った「ショッキングな出来事」は本当の事にさんぜん尾ヒレ(魔法とか悪魔とか)がついて面白いお話になって娯楽作品として楽しめちゃう。残虐な事も300年以上経ってしまうと昇華して芸術になるのかな。変な話ですが、寺をつぶした跡地である東京タワーに行くと寒気がするけど、中世の拷問道具のある博物館に行っても呪われるような気はしなかった。怨念も300年以上を経ると土に帰るのかしら。。。。すみません関係ないみたいなコメントになっちゃって。
2010年06月30日 17:45
ジャケットやブックレットの数少ない写真から想像するしかないのですが、デュモーの体当たり演技炸裂!という感じ。体が柔軟な上に、表情も豊かなデュモー選手ですから、彼の一人舞台だったことでしょうね。オルランドの衣装は、迷彩カラーのプリントをちょっと日本の裃と袴風に仕立ててしかもモダン。こういうのが似合うのは長身痩躯のデュモーならではだわ。

わたしも、その他の歌手に関しては同意見です。ドリンダ役の人が僅かに光ってる程度。
オケも、歌手の邪魔をしないという程度(?)で、ちょっと古めかしい感じもいいんじゃないですか。
2010年07月01日 10:14
Mevさん、

>ショッキングな出来事
>面白いお話になって娯楽作品として楽しめちゃう
オペラも歌舞伎もそうですが、死んだの殺したの、ご乱心だのって、そういう極端な感情を見るのが、結局面白いんでしょうね。
普段の生活では、心の奥に潜んでいる感情というか・・・
劇場は日常から切り離された異空間で、観客はそこで「ガス抜き」して、また日常に戻っていく・・・そういうものなんだと思いますね。
2010年07月01日 10:19
レイネさん、

>デュモーの体当たり演技炸裂
ほんとにそうですね!
彼の声はわりと柔らかめで品が良く、必ずしも「ご乱心のオルランド」に向いてるとは思えないのですが、役への入り方や演技でそれを補って余りあるんでしょうね。
やはりこの作品は、狂っていくオルランドの演技が見モノなので、舞台を見たいです。

>オルランドの衣装
私もジャケ写真を見て、和洋&古今折衷テイストの、面白い衣装だと思いました。
ポーズもカッコ良く決まってて、素敵ですね♪

この記事へのトラックバック