ツェンチッチ「メゾ・ソプラノのためのオペラ・アリア集」

カウンターテナーのツェンチッチとファソリス指揮による、ヘンデルの「メゾ・ソプラノのためのオペラ・アリア集」を聴いてみました。
去年の「ファラモンド」全曲盤の出来からして、結構期待して買ったのですが、予想以上に素晴らしいです!

Handel: Opera Arias
Virgin Classics
2010-03-01
Max Emanuel Cencic


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ブックレットにツェンチッチが寄せている文によれば、選曲には非常に時間をかけて悩み抜いたそうです。
結果、ヘンデル若きイタリア時代の成功作「アグリッピーナ」から、オペラとしては最後期の「セルセ」「イメネオ」まで、ヘンデル・オペラの歴史が俯瞰できる選曲となりました。
セネジーノやカレスティーニといった、当時の人気カストラート用に書かれたアリア、さらに女性歌手が歌った男役のアリアが含まれています。

「メゾ・ソプラノの」と題されているせいか、今までのカウンターテナーのヘンデル・アリア集とは、選曲がだいぶ異なりますね。
例えば「ジュリオ・チェーザレ」のチェーザレのアリアはなく、また「オンブラ・マイ・フ」もありません。
冒頭の「Sorge nell'alma mia」は、ソプラニスタ(男性成人ソプラノ)を名乗っていた、クリストフェリスの録音で聴いたことがあった曲です。
3曲目・5曲目も、今まで女性歌手のしか知りませんでした・・・つまりツェンチッチ、ちょっとだけ声が高いんでしょうね。

でもそれだけじゃないです。
まず技巧的な曲(上記の3曲が特にそうです)が、メチャクチャ上手い!
しかも男らしくて力強い!

3曲目の「Salda quercia in erta balza」(当時カレスティーニが歌った)は、三澤寿喜 著「ヘンデル」(音楽之友社)に拠れば「ロ音から二点イ音という彼の広い音域がめいっぱい利用されているが、停滞した和声の上で延々と続く十六分音符のメリスマは空疎である」とあり「単に技巧を誇示するだけの陳腐な内容」とバッサリのアリアです。
しかし、このツェンチッチの歌を聴けば、「空疎」なんて感じてるヒマは全くありません。
音楽的には駄曲でも、歌手がスゴけりゃここまで面白いという好例ではないでしょうか。

この曲は、キルヒシュラーガー(M-S)のヘンデル・アリア集にも入っています。
彼女も技術的にはこなしていますが、美しく歌おうという気が先行していて、「強風に打ち勝って岩に立つ樫の木」という力強い内容とそぐわないです。
(この辺に女性歌手の限界を感じます・・・、まあ、バルトリみたいな人もいますが)

これら技巧曲に挟まって歌われるラブ・バラード(笑)系の曲は、一転して優しい曲調と伸びやかな歌いぶりが心地良く、その対比が見事です。
ファソリスの指揮も、ヴァイオリンに有刺鉄線が張ってあるのでは?と思うような攻撃的なものから、夢見る桃源郷路線まで、緩急・硬軟を自在に使い分けていて、やはりこの人、ただのイタリア入道ではありませんね~♪

セレナータ「パルナス山の祭典」からの2曲には、アリア集としては珍しく、合唱も入っています。
特に「Non tardate~」は美しいパストラールで・・・とか、書いてるとキリがないのでもう止めます。
とにかく、ヘンデル好きの人もそうでない人も、聴いてくださいッ!!

まあ、ここまで歌えるんだったら、「Dopo notte」とか入れて欲しかったな・・・というのが贅沢な不満でしょうか。
これはぜひ、2枚目も出さなきゃいけませんね、チッチ坊♪

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この記事へのコメント

sarahoctavian
2010年03月15日 15:40
わぁ~REIKOさん、早速のレビューありがとうございます!このCD、私はサラ&ロージーのデュエット集と一緒にアマゾン配達お願いしてるので、あと一週間お預けなの。試聴を聴いただけですが、これで期待感が益々強まりましたわ。ホント、チッチ坊のアリオダンテやルッジェーロといった王子様パート聴いてみたいですよねぇええ。
2010年03月15日 18:34
ツェンチッチのケルビーノが気に入っています。(オペラの舞台でないのが残念ですが。)
このCDも聴いてみたいですね~。
アルチーナ
2010年03月15日 21:44
おぉ!大絶賛ですね!これは楽しみです。
youtubeで早速REIKOさんが挙げられている曲をアップしている人がいたので聴いてみました。
実はチッチ坊、今までピンと来なかったのですが、確かに良さそうです・・

私は今まで勇壮な曲ってCTよりもメゾが歌った方がカッコイイというイメージを持っていたのですが、良いですねカッコイイCT!!

『テゼオ』のタイトルトールもやるらしいし・・なんだかとってもワクワクする方向に進んで行っていて楽しみです。

う~~ん、やっぱりファソリス、好いんですね!
ロデリンダ、録音して欲しいな・・・

Mev
2010年03月15日 23:08
REIKOさんのお勧めにはなぜか従順になってついついHMVで「カートに入れる」ボタンを押してしまうんです。バルトリも魔がさして(いえアドバイスに従い)買ってしまったし、ヘンデルカンタータ全集もついカートボタンを「ぽちっとな」っとやってしまいました。チェンチッチも買ってしまいそうです。
2010年03月17日 11:10
sarahoctavianさん、

充分期待していいですよ~♪
ついにカンターテナーもこのレベルまで来たか、という感じです。
まあ、今まで何度も「ついに」って思ってますが・・・(笑)
「王子様パート」は、やっぱ若いうちにやって欲しいので、早いトコ挑戦して欲しいですね!

Ceciliaさん、

>ケルビーノ
確か以前、ブログの記事になさってましたよね。
このCDは、もう少し「大人の男性」のアリアが多いですが、男っぽくでカッコいいです。
やっぱり男性は肺活量が違うなあ・・・と思いました。
2010年03月17日 11:17
アルチーナさん、

このブログを始めてから買ったヘンデルのCDでは、一番いいような気がします。
「勇壮な曲」が、ほんとに勇壮に聴こえます。
声に芯があって、やはり女性とはパワーが違うんだなあ・・・と思いました。
こういう歌手の活躍がきっかけで、ヘンデル・オペラのファンが増えたらほんとに嬉しいですね!

Mevさん、

散財させてしまって、すみません・・・(^ ^;)
でもCDを買うことは、アーティストへの応援になるので、コレ!というものにはドン!とお金を出すのも、音楽ファンとして大切ですよね。
ヘンデル・カンタータ集、第2集もこのツェンチッチと一緒に届いたので、近々感想を書きます。
sarahoctavian
2010年03月21日 01:03
REIKOさん、今日届いたこのCDを聴きながら(3回目!)書いてます。怒涛のように激しく、また限りなく甘く優しく、素晴らしいですね!超絶技巧の曲では息つくひまもありませぬ。その合間のフロリダンテやタメルラーノからのラブバラード(うふ)が涙が出るほど美しいじゃないの。去年ミュンヘンでもタメじゃなくてアンドロニコ歌えばよかったのに~。パルナス山の祭典のパストラルはアシス&ガラテアに酷似のがありましたね?
あ~しばらくこのCD堪能させてもらいますわ。裏ジャケの横顔チッチ坊も美しくて二重丸
2010年03月22日 11:17
sarahoctavianさん、

>素晴らしいですね!
いやもう、ほんとに・・・私も何度も聴いています~♪
カウンターテナーっていうと、今まで「中性的な」イメージが売りだったような気がしますが、これはすごく男っぽいですよね。
だからこそ、甘美なラブ・バラード(笑)にもグッと来るんですよね。
バロック時代のカストラートって、単に声が高いだけじゃなく、こういうパワーで圧倒したのでは?と思いをはせました。

>アシス&ガラテアに酷似のがありましたね?
ええと、それは気づかなかったんですが、手持ちのCD(クリスティ盤)には似た曲はありませんでした。
(「アシス~」には複数バージョンがあるので、その違い?)
「パルナス~」は、オラトリオ「アタリア」からの転用が多いそうなんですが・・・。

>裏ジャケの横顔チッチ坊も美しくて
私もそれ全く同感です!!\(^ ^*)
(日本人女性ウケする横顔なんでしょうか?)
裏ジャケ萌え~♪ですね。
sarahoctavian
2010年03月22日 17:51
アシス・・は私もクリスティーのCDです。そう言われて不確かになり(笑)さっきイントロを走り聴きしました。あ~やっぱり違いましたか。でもどこかで聴いたメロディーなのよね(もっともそういうパターンって多いけど)。REIKOさん、この謎解き解決してください、でないと眠れなくなっちゃいそうですぅ。
アルチーナ
2010年03月23日 15:45
我が家にも届きました!
私は横顔写真より中の裸足でシャツのボタンを沢山外している写真の方が・・好きです。

ラブ・バラード・・私にはちょっと甘さが物足りませんけど・・
1曲目から、演奏も含めてのかっ飛びっぷりは心地良いですね!

ああ・・『ファラモンド』買ってないんだった!適当なタイミングを見つけてそちらも買いたいと思っています・・

(天邪鬼なのでファラモンドを買わずにゴールのアマディージを買ってしまった私・・・)
2010年03月24日 13:17
sarahoctavianさん、

>どこかで聴いたメロディー
「アタリア」を聴いていれば、そこにあった可能性が高いと思いますよ。
(私は聴いてないので、良くわかりませんが)
まあ、ヘンデルはあちこち自分の作品から(他人のも?)転用が多いので、どこかで聴いたメロディーに出会う可能性は大です。

私は9曲目の「Come nube~」のオケ部分が、「どっかで聴いたような・・・」でした。
たぶん「リナルド」の中だと思いますが、「リナルド」はイタリア時代の曲から大量転用してるので、それではないかと思います。
「Non tardate~」は、私は「初めて聴いた」って感じでしたね。
もし聴いていれば(好きなタイプの曲なので)、覚えているはずです・・・。
2010年03月24日 13:27
アルチーナさん、

>裸足でシャツのボタンを沢山外している写真
あ、アルチーナさんは「裸足萌え♪」でしたか。(笑)
アーティストが裸足の写真て時々ありますけど、ポピュラー音楽ならともかく、クラシックだとちょっと驚きますよね。
今回の写真も、座っている椅子の格調高さ?と、「裸足」がある意味ミスマッチで、そこがセクシーなのかな?とも思いますが。
確かクリスティーが、フランスの宗教音楽のCDで、裸足で立ってるジャケがあったと・・・全く意図がわかりませんでした(笑)。

>『ファラモンド』
もちろん「ファラモンド」のツェンチッチも良かったんですが、今回のソロ・アルバムほどの「凄さ」ではなかったです。
まあ「普通に上手い」ですかね・・・
「ファラモンド」は、3人のカウンターテナーの個性の違いが面白いという印象です。

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