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zoom RSS F.クープラン「神秘の障壁」と音律

<<   作成日時 : 2011/01/11 19:36   >>

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フランソワ・クープランのクラヴサン曲集第2巻、第6オルドルの「神秘の障壁」を打ち込んでみました。
何度も繰り返されるロンドー部分は白で、挿入されるクプレ(3つあります)は、黄色・ピンク・水色に楽譜を色分けしたムービーです。↓↓↓



この曲は♭2つの変ロ長調ですが、ヘ長調や変ホ長調などの近親調を行ったり来たりしています。
♭3つの変ホ長調は、バロックの鍵盤曲ではあまり使われない調です。
当時の一般的な音律では、このあたりのフラット系の調が、あまりきれいに響きません。
それなのに、わざわざ悪い方に転調してるんですね。

実は今回この曲を打ち込んだのは、とある音律で鳴らす実験のためでした。
色々調べたり推理?したりして、もしかしてクープランはこんな音律を使ってたかも・・・なものを突き止めたので、実際にそれで彼の曲を鳴らしてみて、相性を確かめてみたかったんです。
上のムービーの「神秘の障壁」は、以下のような音律で鳴っています。



この時計の文字盤みたいな図は五度圏サークル図といい、音律の話に必ず出てきますが、今ここで真面目に説明してる時間も場所もないので、思いっきり端折ると(笑)・・・

★五度間隔で、12の音が並んでいます・・・音と音の「間」も12ありますね
★この「間」にそれぞれ数字を入れて、合計がマイナス24になるようにすると、音律ができるんです!
(ええ〜〜?たったそれだけで!?)

★入れる数字が「0」だと、その五度は純正できれいに響きます
★プラスは広い五度、マイナスは狭い五度です

★ある音とその時計回りに4つ先の音は、長三度の関係です(例:CとE)
★この間にある、4つの五度に入れた数字の合計がマイナス22だと、この長三度は純正できれいに響くんです!
★マイナス22よりも多くなるにつれて(マイナス16とか丁度ゼロとか)、汚くなるんです!

・・・超カンタン説明、終わり♪

以上を踏まえて、この音律で変ロ長調の主和音「ドミソ」(←移動ド)の響きがどうなるか見てみると、「ドソ」に当たる「B♭-F」がプラス5で、「ドミ」に当たる「B♭-D」がマイナス11.5・・・「まあまあ」の響きです。
(この数字の単位は「セント」で、平均律の半音が100セントです)
同様のことを変ホ長調の主和音で見ると、「ドソ」がプラス5、「ドミ」がマイナス1・・・つまり長三度の響きが急に悪くなっていますね。

ですがこの「響きが変わる」のが、この種の古典調律の面白いところなのです。
比較的安定しているロンドー部分に対し、特に第三クプレ(水色)の最初、A♭音が頻出するあたりで壊れそうな響きになるのが、印象的ではありませんでしたか?
曲全体を通して、E♭音が相対的に「低く」感じられるのも、二つの広い五度を持つこの音律の特徴で、それが随所でさりげない効果を上げています。

ちなみに平均律では、上のサークル図で全ての五度がマイナス2となります。
これだとどの調も同じに響くので、響きの上ではロンドー部分とクプレの対比が付きにくくなるでしょう。
その分は、演奏でカバーするのがピアノのやり方なのでしょうね。

【15日追記】動画の音源はA=440Hzですが、ヴェルサイユ・ピッチにしたものを作りました。



(不等分な音律も「込み」で、全体が全音低くなっています)

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
興味深い内容ですが、音律に関して不勉強なのですぐにはわかりません。
YouTubeも打ち込みじゃなくて本物みたいな響きだなあと感心しながら聴かせていただきましたが。(うちのピアノのチェンバロ音と違ってよい音色です!)何度か聴いて勉強させていただきます。
こういう曲に慣れてしまうと、古典派のソナチネとかとても幼稚に思えてしまいますね。
Cecilia
URL
2011/01/12 10:06
おぉぉ、遂にupされましたね(祝!)

職場PC(&ステレオイヤホン)で3回ほど拝聴しましたが、違和感ないですね。というか、小生、現在は、G♯(A♭)音が低い原形(前に書いた@)の音律を中心に試しているので、むしろA♭がもう少し低い(響きが壊れていた)方が面白いかも、などと感じたりもしています(笑)。
(そういえば、Aのピッチってヴェルサイユでしょうかバロックでしょうか?)
音律説明も分かりやすくて良いですね(感心)。

それにしても、Youtubeの「楽譜めくり動画」の技法、私もマスターしたいなぁ(羨望)。どこかに指南サイトとかフリーソフトとかありますでしょうか?
 横レスですが(笑)、Ceciliaさん、古典派のソナチネであっても、調律(使用音律)さえ良ければ素晴らしく高貴に響きますよ! 要は音律です音律(笑)
koten
URL
2011/01/12 12:36
Ceciliaさん、
聴いていただき、ありがとうございます♪

>本物みたいな響きだなあと
色々実験してみて気づいたのですが、平均律よりも古典調律(モノによりますが)にした方が、チェンバロっぽい響きになるんです。
共鳴や共振が関係ないMIDI音源でも、古典調律にするとクッキリした響きになるのが良くわかるので、本物の楽器ならもっと影響が大きいかと思います。
大げさに言えば、「音律で楽器の音色が変わる」のです!

>古典派のソナチネ
これはkotenさんのコメントにもあるように、ある意味バロック以上に音律の影響が大きいです。
相応しい音律で演奏すれば、全然「幼稚」ではないんですよ。
とにかく平均律ではアンマリなんです・・・(^ ^;)
これもそのうち、記事にしますね〜♪
REIKO
2011/01/13 17:25
kotenさん、

>A♭がもう少し低い(響きが壊れていた)方が面白いかも
そうですね、色々な音律を経験しているツワモノ(笑)の方には、この程度の壊れ方では物足りないかもしれませんね。
「ラモー音律」にすると、もう少し大胆に壊れそうになりますが、ラモー音律は解釈が色々あるので、出しにくいですね。

>Aのピッチってヴェルサイユでしょうかバロックでしょうか?
ああ・・・!(^ ^;)
A=440Hzなので、現代ピッチです。
音源自体のピッチを下げる方法もあると思うのですが、まだやったことないですね。
古典音律にするなら、ピッチもそれなりにした方がいいですよね。
今度方法を調べてみます。

>「楽譜めくり動画」の技法
これはWindowsXP付属の「ムービーメーカー2」で作っています。
楽譜の(静止)画像をタイムラインに順に並べ、「画面切り替え効果」を「フェード」や「ワイプ」にしてるだけで。
つまり、手元のパソコンですべて動画を作って、そのままYouTubeにアップしてるだけなので、YouTubeでの編集機能などを使ってるのではありません。
ムービーメーカーは、いじってればそれなりに使えるソフトですよ。
REIKO
2011/01/13 17:38
REIKOさんは、最近音律に凝っておられるようですね。私も音律については関心があって、「私的CD評」でも時折触れていますが、kotenさんやREIKOさんのお考えとは若干違うようです。ただ、まだそれを論理的に説明できるほど考えがまとまっていません。いずれご披露したいと考えています。
 ところで、ピッチの件ですが、音律を設定できると言うことは、aのピッチも変えられると言うことだと思いますので、変更可能なんでは無いでしょうか? しかし、半音単位ならもっと簡単に、gis(as)(= 415 Hz)あるいはg(= 392 Hz)をaに読み換えればいいと思いますが、いかがですか?
ogawa_j
URL
2011/01/15 17:58
ogawa_jさん、

>いずれご披露したいと考えています
それは楽しみです!
音律に関しては色々な考えがあると思いますが、無批判に「平均律」を受け入れるのではなく、多くの意見がオープンになればいいと思っています。
平均律だけじゃないんだ!と思いを巡らすことが大事ですね。

>音律を設定できると言うことは、aのピッチも変えられると
音律変更に使っている「スケール・チューン」機能は、各音の平均律音程に対して、プラスマイナス63セントまでしか変えられないのです。
従ってヴェルサイユ・ピッチはおろか、バロックピッチの415Hzにもできません。
音源全体のピッチを変える「マスター・チューン」は、「440ではなくて442にしたい」のような、非常に細かい設定が可能ですが、これもプラスマイナス100セントまでなんですね。
このデータ・フォーマットが難しくて、取説を読んでやってはみたのですが、どこか間違ってるのか上手く行きませんでした。
仕方がないので、MIDIデータにピッチ情報を埋め込むのは諦め、音源でMIDIをWAVに変換する時、カラオケの「キーを下げる」ような機能で全音下げ、「演奏設定のままでWAV変換」してみました。
音律が固定のままで音だけ下がったら困るな・・・と心配でしたが、うまく行って一安心!
それをMP3にしたのが【追記】の演奏です。

REIKO
2011/01/15 21:43
またogawa_jです!kotenさんの寄稿を読んで思いついたことを、ついコメントしてしまいました。つまらない文ですが、ご一読いただければ幸いです。ただ、皆さんの真面目がご考察をぶちこわすようなものでないと良いんですが・・・。
URLは:http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2011-01-15?comment_success=2011-01-16T12:23:20&time=1295148200
ogawa_j
URL
2011/01/16 12:27
ogawa_jさん、

コメント拝見しました〜♪
なるほど音律は「音学」だった、ですか。
音律の話になると必ず出てくるピタゴラス・コンマ、確かに悩ましい問題です。
彼の言う「純正5度」を重ねて作る音律が「閉じなかった」のが、全ての始まりだったのですね・・・。
「中全音律の旋律」に関しては、私もコメント入れてきました。
曲によっては、中全音律だと旋律がギクシャクすると感じています。
REIKO
2011/01/16 19:05
音律の説明,見事に簡潔です。
期待して聞きましたが,それほど壊れかかっている感じはしません。リコーダーの人とかフラット系の音を露骨に下げる人がいますが,どきっとする美しさだったりします。
Enrique
URL
2011/01/20 01:33
このクープランの曲は、上部二声の絡み合いを、下部のアルペジオが支えている、全体を通じて和音の変化を楽しむ作品だと思います。属調の変ホ長調の和音が、あまりきれいでない事は、むしろ主調への吸引力が働いて、最後の変ロ長調に終始すると、ほっとした気分になることに貢献しているように思えます。こうしたクープランの狙いは、古典音律に於いてこそ達成されるのでは?
ogawa_j
URL
2011/01/21 10:49
Enriqueさん、

>音律の説明
難しいことをどっさり書いてある本もありますが、結局これだけ分かっていれば既存の音律を理解したり、自分のオリジナル音律も作れる・・・と思っています。
あとは実験環境さえ整えば、色々でき(楽しめ?)ますね。

>それほど壊れかかっている感じはしません
あやや、そうでしたか・・・(^-^;)
変ホ長調の下属和音の長三度が、ピタゴラス長三度を少し越えていますが、主和音の方は「超えていない」ので、許容範囲でしょうかね?
この曲の場合、曲想の変化や曲の構造と音律の「クセ」がピッタリ適合しているので、なじんでしまっているのかもしれません。
「ラモー」は+5の部分が+7〜8もあるので、もっと変化が大きいです。
★今度、もっと「大胆に歪む」のや「破綻する例」(笑)もアップしてみようかと思います。
REIKO
2011/01/21 23:28
ogawa_jさん、

>最後の変ロ長調に終始すると、ほっとした気分になる
まさにそうだと思います。
一般的な不等分律(この音律もそれの類)では、シャープやフラットが2つくらいまでの調は概ね綺麗に響きますが、それを超えると急に響きが厳しくなる傾向があります。
この曲はそれを「効果」として狙っている感じがします。
変ロ長調部分で「ほっとする」感じがとても効いていますね。
平均律だと全体が同じようになってしまい、嬉しくも何ともないです。(笑)
REIKO
2011/01/21 23:38
クープランなどのフランスの曲にはどのような音律が用いられていたのかを特定するのは困難です。ドイツの理論家のように解析可能な形での文献を残していないからです。ラモーの音律も諸説ありどれが正解かは決めにくいのです。確からしいのは純正五度と調整された五度とがくっきりと別れていないこと、したがってたくさんある調整五度も幅は同じではないことは読み取れると思います。良き趣味に従って三度五度の響きの移り変わりを程よく配置していくことになるのではないでしょうか。実際の曲で試してみるとシャープキイの音はすべて低めにとると良く合うように感じます。
 フランスの音律ができなくてもキルンベルガーやヴェルクマイスターなどのドイツ系音律よりも12平均律の方が曲によく合います。12平均律だけを排除すべきではありません。試してみてください。きっとわかります。
lydian7
2011/05/30 23:05
lydian7さん、

>ラモーの音律も諸説あり

特定はできませんが、色々な案や説を試してみることは可能なので、以下の記事に音源をアップしています。↓↓↓
http://handel.at.webry.info/201101/article_6.html

>キルンベルガーやヴェルクマイスターなどのドイツ系音律よりも12平均律の方が曲によく合います
フランスバロックのクラヴサン曲が、ドイツ系の音律で作曲された可能性はとんど無いので、使ってみようとは思いません。
私が知りたいのは「作曲家が当該曲の作曲時に使っていた音律」です。
または、正確な特定ができなくても「それに近い音律」でしょうか。
仮に後世の全く異なる音律で「よく合っている」としても、それは後付けの偶然にしか過ぎず、「お遊び」の領域を出ないからです。
で、上のURL記事で「平均律」も試しています。
これだけしか知らなければ、「まあいいかな?」でしょうが、ミーントーン系(フランス・バロックの音律はこれです)を聴いた後では「鈍くてつまらない」の一言に尽きます。
何よりもチェンバロ(←生楽器の場合)は、平均律に近くなればなるほど、音の冴えがなくなるのが最大の欠点です。
このところ色々と試して痛感してますが、チェンバロでもピアノでも、純正音程がどこにもないような音律は「ダメ」だと思うんですよ・・・。
REIKO
2011/05/31 00:37

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